2014年
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発表のポイント: ◆南海トラフ沈み込み帯の浅部プレート境界断層(デコルマ)内部に存在する流体の分布が異なることが明らかになった。 ◆デコルマの異なる流体分布とそれに伴う間隙水圧(注1)の変化は南海トラフの津波地震を巨大化する可能性がある。 ◆この成果は、南海トラフ巨大地震・津波発生モデルの構築や、防災・減災対策に貢献するものである。..
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ユーラシア大陸中緯度域で頻発している寒冬の要因分析 ~北極海の海氷の減少により寒冬になる確率は2倍~
発表のポイント: 大気モデルを用いた大規模アンサンブルシミュレーション(注1)を実施し、北極海の海氷減少がユーラシア大陸中緯度域に寒冬をもたらし得ることを明らかにしました。 近年の急速な海氷の減少によって、ユーラシア大陸の中央部で寒冬になる確率が2倍以上高くなっていることが分かりました。 世界中の気候モデルによる将来予測シミュレーションを解析した結果を踏まえると、近年の寒冬の増加は温暖化の過程で一時的に生じる過渡現象だと示唆されます。..
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地球温暖化の停滞現象(ハイエイタス)の要因究明 ~2000年代の気温変化の3割は自然の変動~
発表のポイント: 全球気候モデルによるシミュレーションにより、2000年以降の地球全体の気温上昇の停滞状態(ハイエイタス、注1)の再現に成功しました。気候の内部変動(注2)の地球全体の気温変化に対する寄与は、1980~2010年までの各年代で47%、38%、27%と無視できない大きさであることが分かりました。地球全体の気温変化における気候内部変動の寄与は、人為起源の温暖化が顕著になるにつれて減少しており、今後温暖化が進めば、この割合はさらに小さくなると示唆されます。..
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メキシコ湾流の流路変化がもたらす北極海の海氷減少とユーラシア大陸の異常寒波
近年進行する北極海の温暖化(海氷減少)およびユーラシア大陸の異常寒波が、メキシコ湾流の流路(流軸)の変化によって引き起こされていることを、気象データの解析及び数値モデルにより解明しました。..
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http://www.nies.go.jp/whatsnew/2014/20140728/20140728.html
海洋の自然のゆらぎや人間活動の影響を考慮した大気大循環モデルによる実験により、近年の猛暑発生頻度の変動要因を調査しました。その結果、近年のように海の表層の温暖化が緩やかな期間でも、亜熱帯から高緯度にかけての広い範囲では、大気中の二酸化炭素濃度の上昇を始めとした人間活動の影響が、猛暑の発生頻度を増加させていることがわかりました。また、特に近年の中緯度での猛暑の頻発には、海洋の数十年周期の.. -
◆IODP (統合国際深海掘削計画、注1)で初めて掘削が可能になったタヒチと世界遺産であるグレートバリアリーフのサンゴ化石試料を用いて、過去の海洋環境変動を解明。 ◆タヒチのサンゴ試料について世界最高精度のホウ素同位体分析(注2)を行うことで、最終氷期から現在にかけて太平洋赤道域の表層海水が酸性化していたことを発見。 ◆グレートバリアリーフのサンゴ試料を分析することによって、最終氷期の最寒期から現在までの水温上昇に対するサンゴの環境順応力を解明。..
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熱帯域におけるマッデン・ジュリアン振動の1ヵ月予測が実現可能であることを実証 ~スーパーコンピュータ「京」× 次世代型超精密気象モデル~
独立行政法人海洋研究開発機構(理事長 平朝彦、以下「JAMSTEC」という)基幹研究領域・大気海洋相互作用研究分野の宮川知己ポスドク研究員と、東京大学大気海洋研究所の佐藤正樹教授らJAMSTEC・東京大学・理化学研究所の共同研究チームは、熱帯域における主要な大気変動であり全球に影響を及ぼすマッデン・ジュリアン振動(MJO)について、スーパーコンピュータ「京」(※1)を利用して、地球全体で雲の生成・消滅を詳細に計算できる全球雲システム解像モデル「NICAM」(※2)による数値実験を実施し、約1ヵ月先ま..
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約8000年前から現代までの北米大陸の大気循環の変化 ~洞窟の岩石や湖の沈殿物から明らかに
北太平洋・カナダ西部・北米東海岸付近でのシーソーのような大気状態(太平洋北米パターン、注1)は、そのパターンによって北米の天候が大きく影響を受けるため多くの研究がされてきました。しかし、太平洋北米パターンそのものが数百年や数千年といった長い時間スケールにおいてどのように変動してきたのかはあまりわかっていませんでした。
東京大学大気海洋研究所の芳村圭准教授と劉忠方 元 日本学術振興会外国人特別研究員(現中国天津師範大学准教授)らは、北米大陸の東側と西側のそれぞれで、洞窟の天井から落下する水滴に含まれた炭.. -
海洋細菌で見つけた新しい光エネルギー利用機構 -塩化物イオンを輸送するポンプの発見-
東京大学大気海洋研究所の吉澤晋特任研究員、岩崎渉准教授、木暮一啓教授のグループは、宮崎大学の小椋義俊助教, 林哲也教授、マサチューセッツ工科大学のEdward F. DeLong教授らと共に、海洋細菌(Nonlabens marinus S1-08T)から光エネルギーを用いて塩化物イオンを細胞内に運び入れる新しい種類のポンプ(ロドプシン)を発見しました。
これまで太陽の光エネルギーを利用している海洋生物は、クロロフィルを持つ光合成生物、すなわち植物との考えが常識でした。しかし、10年ほど前にプロテオロ.. -
クラゲの大発生を食い止めろ ~プラズマ処理技術を応用してクラゲ幼生の着底を制御~
クラゲは、大発生をおこし経済的・生態的なダメージを与えることが知られています。ミズクラゲも例外ではなく、発電所の取水口を塞ぐことによる発電停止をひきおこす、漁業の妨げになるなど社会問題となっています。しかしミズクラゲは世界中に分布しているにもかかわらず、大発生の予測や制御には至っていません。卵から孵化したクラゲの幼生(プラヌラ)は、しばらく海水中を浮遊した後、貝殻や岩などの自然由来のものだけでなく、海岸部のフロートや桟橋などの人工構造物にもくっつきます(着底)。着底後、ポリプと呼ばれるイソギンチャク..
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地球上の全海域のわずか1%の面積にも満たないサンゴ礁は、全海洋生物のおよそ3分の1の命を育む、地球上で最も生物多様性豊かな場所の一つです。しかし近年、地球温暖化や海洋酸性化などで、サンゴと共生し、サンゴに栄養を供給している褐虫藻がサンゴから抜け出る「白化現象」が起き、サンゴと褐虫藻の共生関係が崩壊し、その結果、サンゴ礁に生息する多様な生物にも影響が及んでいます。このような問題は、サンゴと褐虫藻からなるサンゴ共生体を遺伝子レベルで理解することにより解決の糸口が見える可能性があります。しかし、これまでサ..
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東北沖地震に伴い深部流体が マントルから海溝までプレート境界を迅速に移動した
マグニチュード9を超える巨大地震の発生には、上盤側の大陸プレートと下盤側の海洋プレートの境界面に存在する流体が重要な役割を果たしていると指摘されている。2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(以下、東北沖地震)はオホーツクプレートと沈み込む太平洋プレートの境界で発生し、これまでその発生メカニズムを突き止めようとする研究がなされてきた。しかし、海水、間隙水や堆積物に含まれるガスの量を比較するなどして、プレート境界面における深部流体の地球化学的な性質を調べた研究はほとんど行われてこなかった。..