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温室効果ガス排出量を削減したシナリオにおいても北極温暖化増幅への考慮が必要

2022年2月28日

海洋研究開発機構
東京大学 大気海洋研究所

国立研究開発法人海洋研究開発機構(理事長 松永是)地球環境部門北極環境変動総合研究センター北極域気候変動予測研究グループの小野純特任研究員らは、東京大学大気海洋研究所(所長 河村知彦)の渡部雅浩教授とともに、将来の気候変動予測データを解析した結果、温度上昇そのものは抑制されるが、将来、北極域の温度上昇は全球平均に比べ抑制されにくい可能性があることを明らかにしました。

北極域は地球温暖化の影響がもっとも顕著に現れる地域と言われていますが、これまでの気候変動予測研究から、北極域の気温の上昇量が全球平均よりも大きいことが示されており、過去数十年間の観測データからも確認されています。

今後も温室効果ガスが排出され続ければ地球全体(全球)の温暖化は加速し、北極域の温暖化も北極温暖化増幅に応じて加速することは想像に難くありませんが、温室効果ガスを削減していった場合に北極温暖化増幅がどのように変化するのかは、これまで不明瞭でした。そこで本研究では、温室効果ガスの排出量が増加する場合(高排出シナリオ)と減少する場合(低排出シナリオ)のシミュレーション等を実施し、比較・解析を試みました。

その結果、将来の気温上昇については高排出シナリオの場合が高くなりますが、低排出シナリオの場合では、高排出シナリオに比べ気温上昇が大きく抑制されるものの、北極温暖化増幅の強さを表す指標となる北極温暖化増幅インデックスが、高排出シナリオよりも低排出シナリオの方が大きくなるという結果になりました。また、北極温暖化増幅インデックスの差は、海氷面積の差が現れるタイミングとほぼ一致するように2040年代頃から現れており、北極温暖化増幅インデックスと海氷面積の変化は連動していることが示唆されました。

そこで、本結果の要因について、エネルギー収支の観点から解析したところ、低排出シナリオでは、晩夏に海氷が残ることによる氷-アルベドフィードバックを介して北極温暖化増幅が高められていることもわかりました。

本研究の成果は、温室効果ガスの排出が減少すれば、地球全体の気温上昇は抑制されるものの、将来において全球平均に対する北極平均の気温上昇の割合は大きくなる、すなわち北極域の温度上昇は全球平均ほど抑制されない可能性があることを意味しています。

このように増幅率が大きくなることで北極域の気候にどのような影響を与えるのかについて、今後研究を進めていくことは、温室効果ガスの排出量削減による気候変動緩和策を検討していくためにも、また北極域の気候が日本のような中緯度域の気候にも影響することからも重要と考えています。今後は、エアロゾルなど他の外部要因が将来の北極温暖化増幅の変化に与える影響について解析を進める予定です。

詳しくはこちらをご覧ください。
  海洋研究開発機構プレスリリースこのリンクは別ウィンドウで開きます(2022年2月25日)

プレスリリース