気候変動下で利根川からサケが消えたのはなぜか?
2025年9月11日
国立研究開発法人海洋研究開発機構
国立研究開発法人水産研究・教育機構
国立大学法人東京大学


国立研究開発法人海洋研究開発機構(理事長 大和 裕幸)付加価値情報創生部門アプリケーションラボのYu-Lin Chang (ユリン チャン)副主任研究員は、水産研究・教育機構水産資源研究所の本多 健太郎グループ長、東京大学大気海洋研究所の森田 健太郎教授とともに海洋の再解析データと20年間(2001~2020年)に及ぶサケ稚魚に見立てた粒子の追跡シミュレーションを行うことによって、利根川サケの近年の個体数減少の要因を調べました。
シミュレーションの結果、遊泳戦略の違いや致死水温の限界値の追加に関わらず、近年の個体数減少を再現するシナリオは存在しませんでした。一方で、個体群成長率の低下は、黒潮・黒潮続流と親潮の北偏による水温上昇とサケ稚魚の餌である動物プランクトン量の減少と相関していました。本州太平洋側のサケ稚魚の移動経路上では、冷たく栄養豊富な親潮に代わって、温かく栄養の少ない黒潮・黒潮続流が流入し、水温上昇と動物プランクトン量の減少を引き起こしていることがわかりました。平均水温と動物プランクトン量の偏相関分析※4 では、後者の動物プランクトン量が利根川サケの個体群成長率と一貫して関連する主要因であることが示されました。動物プランクトン量の減少は、サケ稚魚の成長と生存に影響を及ぼし、個体群成長率を低下させたと考えられます。
黒潮・黒潮続流と親潮の北偏は、気候変動の影響によって今後も継続するのか、あるいは南側へ戻る可能性もあります。このことは、利根川サケの今後の個体群成長率、とりわけ、再び親魚の遡上が見られるかどうかに大きく影響するでしょう。
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海洋研究開発機構プレスリリース
(2025年9月11日)
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