親潮・磯口ジェット合流域が 混合水域に栄養塩を供給することを発見 ―サンマなどの幼魚の育成場に栄養が供給されるシステムを解明―
2024年8月22日
東京海洋大学
東京大学 大気海洋研究所
北海道大学
国立大学法人東京海洋大学で受け入れている日本学術振興会特別研究員の矢部いつか博士、東京海洋大学学術研究院の長井健容准教授、東京大学大気海洋研究所の伊藤進一教授らの研究グループは、北西太平洋の親潮と磯口ジェットの合流域で発生する湧昇が栄養塩豊富な海水を表層付近へ供給する引き金となることを明らかにしました。
磯口ジェットと隣接する親潮との間には亜寒帯フロントが存在し、フロントとその下流域は小型浮魚類の好漁場として知られています。特にフロントの南に位置する磯口ジェットは黒潮を起源とし高水温なため、多くの小型浮魚類の幼魚たちの生育場となっています。しかし磯口ジェットは黒潮を起源とするため栄養塩が乏しく、ジェット周辺の幼魚たちの餌を含む生物生産を支える栄養塩がどのように供給されているのか不明でした。
本研究グループは、磯口ジェットを横断する観測を複数年にわたり実施し、親潮と磯口ジェットの合流域にどの年でも強い湧昇流が発生することを示しました。また、合流域では磯口ジェットの高温・高塩な海水の下に栄養塩豊富な亜寒帯水が流れ込み、湧昇によってジェット内部に栄養塩が供給されることを明らかにしました。
今回の発見は、磯口ジェット周辺が多くの小型浮魚類の幼魚の生育場となっている要因を解明しただけでなく、世界中に分布する同様な海流の合流点の重要性を示すもので、海洋保護区の選定などに必要な科学的知見となることが期待されます。
本研究は、水産研究・教育機構の筧茂穂主任研究員、北海道大学低温科学研究所の西岡純教授と共同で行いました。
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東京海洋大学プレスリリース(2024年8月22日)