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スケーリーフットが身にまとう硫化鉄の生成機構を解明

2019年9月10日

海洋研究開発機構
東京大学大学院理学系研究科
東京大学大気海洋研究所

国立研究開発法人海洋研究開発機構海洋機能利用部門 生命理工学センターの岡田賢 研究員は、国立大学法人東京大学大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻の鈴木庸平准教授および大気海洋研究所の佐野有司教授らと共同で、インド洋海域の熱水活動域でのみ生息が知られている腹足類「スケーリーフット」が硫化鉄結晶を鱗に保持する機構を明らかにしました。

スケーリーフットはインド洋中央海嶺の熱水活動域にのみ生息する腹足類で、軟体部表面に鱗を持つことが特徴です。これまでの研究により、鱗の内部には硫化鉄ナノ粒子が含まれていることは明らかとなっていましたが、硫化鉄が生物学的作用により生じたのか、またどのような過程を経て生じたのかについては明らかになっていませんでした。

そこで本研究グループは、鱗に含まれる硫化鉄について微小領域の元素分析と最新鋭の電子顕微鏡観察を行い、硫化鉄が生物起源であることを明らかにしました。特に、鱗の内部に含まれる硫化鉄は、スケーリーフットが体内から鱗へ硫黄を放出し、鱗の外部から浸透してきた鉄イオンと反応することで生じていることを明らかにしました。このメカニズムは、他の生物による鉱化作用とは異なるものです。

スケーリーフットは、食道腺の細胞内に硫黄酸化細菌を共生させるなど、熱水噴出孔の極限環境に適応した進化を遂げています。スケーリーフットが鱗に排出している硫黄には共生細菌の代謝物も含まれることを考えると、これは共生メカニズムの一部として進化した全く新しい生存戦略であり、同様の環境に生息している共生生物でも同様な代謝物の排出経路を持っている可能性が示唆されました。

スケーリーフットが生み出す硫化鉄には、半導体である黄鉄鉱(pyrite, FeS2)や磁性を持つグリグ鉱(greigite, Fe3S4)が含まれています。これら硫化鉱物の生成には一般的に高温が必要とされていますが、スケーリーフットは10–20℃の海水温下で生成しています。このことから、スケーリーフットが硫化鉱物を生み出すメカニズムを模倣することで、鉄に限らず広範な機能性無機材料の製造への応用が期待されます。

詳しくはこちらをご覧下さい。
   海洋研究開発機構プレスリリースこのリンクは別ウィンドウで開きます(2019年9月10日)

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