過去5万年間の大気放射性炭素濃度を復元:これまでで最も正確な”時計”を構築
2012年11月1日
横山 祐典(東京大学大気海洋研究所)
東京大学大気海洋研究所の横山祐典准教授は英国オックスフォード大の研究グループらと共同で、福井県水月湖の堆積物を使って、過去5万年間の大気放射性炭素濃度を復元を行い、成果を10月19日付けScience誌に発表、Perspectiveにも取り上げられました。
放射性炭素年代測定法は、今年度大気海洋研究所にも導入される加速器質量分析装置を使うと、わずか数ミリグラムかそれ以下の試料量で分析ができるため、広く大気海洋科学および考古学で用いられています。しかし地球の磁場や海洋循環の変化にともない、過去の大気中の濃度が一定ではなく、“正しい”年代を示さず、年代の誤差が大きくなってしまうことが知られていました。そこで研究チームは、年縞という木の年輪にあたる縞が存在する、福井県三方五湖の水月湖の堆積物を使って過去の大気中の放射性炭素濃度の記録を復元しました。放射性炭素を分析し、その濃度が過去のどの時期に相当するかをより正確に決められるようになりました。今回のデータは放射性炭素の国際補正標準曲線として採用される予定になっています。
論文
http://www.sciencemag.org/content/338/6105/370.abstract
Perspective (紹介記事)
http://www.sciencemag.org/content/338/6105/337.summary
水月湖のコアサンプル
サンプル採集