魚群が作る水中竜巻-渦形成によるホッケ魚群の摂餌戦略
2012年2月20日
北川貴士(東大院新領域/大気海洋研)
中川隆((有)河童隊)
木村龍治(放送大学)
新野宏(東大大気海洋研)
木村伸吾(東大院新領域/大気海洋研)
魚群が合目的的に竜巻のような強い渦を伴う海水運動を励起し、それを利用して摂餌する稀有な例を見つけました。ホッケ(Pleurogrammus azonus)は冬場は水深100 mほどの陸棚域に生息する底魚です。ところが、春から初夏にかけて、奥尻島、利尻島といった北海道の日本海沿岸域では、潮目近くの水深約1 m以深で、「ホッケ柱(ばしら)」と呼ばれる約3万匹からなる直径約3mの柱状の群れを形成することがあります。ホッケの比重は海水より大きいため、定位(同じ深さに留まること)のためには絶えず上に向かって泳ぐことが必要です。この反作用で、柱の中心部には1 m/s程度の下降流が生じ、水面近くでは下降流の中心へと集まる流れ(収束流)が生じます。潮目付近には緩やかに回転する流れがあるため、収束流があると水をはった洗面台で栓を抜いたときと同じような強い渦が形成されます。その結果、ホッケは海鳥に捕食される危険のある海面に近づくことなく、水中に留まって渦が運ぶプランクトンを捕食できることがわかりました。
【写真:ホッケ柱と渦】
本研究は、平成23年度水産学会論文賞を受賞しました。
受賞論文:
Vortex flow produced by schooling behavior of arabesque greenling Pleurogrammus azonus.
Takashi Kitagawa, Takashi Nakagawa, Ryuji Kimura, Hiroshi Niino, Shingo Kimura
Fisheries Science (2011) 77: 217–222.
NHKのテレビ番組「ワンダー×ワンダー」でも紹介されています。
http://cgi4.nhk.or.jp/eco-channel/jp/movie/play.cgi?movie=j_wonder_20090905_0298