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地球史上最大の大絶滅は宇宙のちりが関与か

2019年10月17日

九州大学  
東京大学、他

発表のポイント

◆太古の深海底堆積物に含まれる希ガスやイリジウムに着目し、生物の大量絶滅が起こった古生代末において、地球外物質の大量流入の証拠が見つかった。
◆地球外からもたらされた大量のちりにより大規模な気候変動が起こり、大量絶滅を引き起こした可能性が考えられる。
◆多様な過去の海洋底試料を分析することで、別の時代の大量絶滅についてもその要因を明らかにすることが可能になる。

発表者

尾上 哲治 (九州大学 理学研究院 教授)
高畑 直人 (東京大学 大気海洋研究所 助教)
佐藤 峰南 (千葉工業大学 次世代海洋資源研究センター 上席研究員)
石川 晃  (東京工業大学 理学院 准教授)
曽田 勝仁 (熊本大学 自然科学研究科 博士研究員)
佐野 有司 (東京大学 大気海洋研究所 教授)
磯崎 行雄 (東京大学 総合文化研究科 教授)

発表内容

背景
地球の生命の歴史において、何度か生物の大量絶滅が起こったことが知られています。例えば中生代末期(注1)の約6,600万年前の恐竜の絶滅などは、その代表例です。このときは現在のメキシコ湾に隕石が衝突したことが主な原因であると考えられています。

しかし地球史においては、これよりも更に多くの生物が絶滅したことも知られています。古生代末期(注1)の2億5千万年前には、全ての生物種の90%以上が絶滅するという、地球史上でも最大の大量絶滅が起きました。これはシベリアの洪水玄武岩の噴出という大規模な火山活動によって引き起こされたという考えがこれまでは有力でした。

研究内容
東京大学と九州大学などの研究グループは、岐阜県のチャート層(注2)という地層のヘリウム同位体(注3)および白金族元素の詳細な分析を行いました。このチャート層は、古生代末期の大絶滅期の前後の様子を詳細に記録しているということで世界的に有名な地層です。分析の結果、大絶滅の直前の地層から地球外物質に特徴的な同位体比のヘリウムやイリジウム(注4)の増加が認められました。この分析結果は、大絶滅の原因が宇宙から降り注ぐ大量のちり(惑星間塵)だった可能性を示すものです。

古生代末期の大絶滅が地球外に原因をもつのではないかというアイデアは、世界的に度々議論されてきましたが、この時代の記録を詳細に残す地層は多くなく、決定的な証拠は示されてきませんでした。そのなかにおいて、岐阜県のチャート層は世界的にも貴重な地層であり、今回の詳細な分析は古生代末期の大絶滅が地球外からもたらされた大量のちりにより引き起こされた可能性を示す重要な証拠となるものです。

今後の展望
生物の大量絶滅の原因をヘリウムに着目して調べる研究は初めてではありませんが、良質な地質試料と綿密な分析を組み合わせることで、信頼性のある結果が世界で初めて得られました。P/T境界における大量絶滅は、大規模な火山活動が要因と考えられてきましたが、本研究の結果は新しい知見をもたらすものです。今後、他の地域でも地球外物質流入の証拠を得たり、他の時代の大量絶滅について調べたりする上で本手法が有用であると考えられます。

発表雑誌

雑誌名:Progress in Earth and Planetary Science
論文タイトル:Enhanced flux of extraterrestrial 3He across the Permian–Triassic boundary
著者:T. Onoue, N. Takahata, M. Miura, H. Sato, A. Ishikawa, K. Soda, Y. Sano and Y. Isozaki
DOI番号: 10.1186/s40645-019-0267-0
アブストラクトURL: http://progearthplanetsci.org/highlights/253.htmlこのリンクは別ウィンドウで開きます

雑誌名:地学雑誌
論文タイトル:古生代末(2.5 億年前)大量絶滅層準の高いヘリウム同位体記録 ─冥王代以来の地球史を通した地球外物質流入同定方法の探索─
著者:高畑直人, 尾上哲治, 佐野有司, 磯﨑行雄
DOI番号: 10.5026/jgeography.128.667
アブストラクトURL: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jgeography/128/4/128_128.667/_article/-char/ja/このリンクは別ウィンドウで開きます

問い合わせ先

東京大学大気海洋研究所 海洋化学部門
高畑 直人
E-mail: ntakaaori.u-tokyo.ac.jp      ※アドレスの「◎」は「@」に変換して下さい

用語解説

注1)中生代、古生代
いずれも地質時代の大きな区分の一つで、その末期に生物の大量絶滅が起こったと言われている。
注2)チャート
堆積岩の一つで過去の深海底で堆積した遠洋性堆積物と考えられている。
注3)ヘリウム
希ガス元素の一つで、その同位体比は地球と地球外の物質で大きく異なる。これを利用して地球外物質を見つけることができる。
注4)イリジウム
白金族元素の一つで、地球外物質に多く含まれている。恐竜が絶滅した中生代末の大量絶滅は隕石衝突が原因とされ、その時代の地層から高濃度のイリジウムが見つかっている。
注5)P/T境界
地質時代区分の境界のうち、約2.5億年前の古生代と中生代の境界のこと。
注6)フラックス
単位面積あたり、単位時間あたりに移動する物質量。

添付資料

図1.岐阜県舟伏山地域のP/T境界(注5)試料採取場所の露頭写真。点線で示した境界を挟んで連続的な試料が得られる貴重な場所である。

図2.(a)ヘリウム-3(3He)の濃度分布。0mがP/T境界で下ほど古い。(b)ヘリウム同位体比の鉛直分布。(c)酸処理して残った物質を分析した時のヘリウム同位体比。(c)イリジウムの濃度分布。3He濃度とイリジウム濃度は同じ傾向を示し、P/T境界(0m)の下約1.5mの区間(時間にすると約50万年)で高い値を示した。

図3.(a)地球外3Heフラックス(注6)の時間変化。右側ほど古い。静穏期(-1.5mより右)に比べてP/T境界直前はフラックスが5倍も高い。(b)化石として見つかる放散虫の種数の時間変化。3Heフラックスが増え始めると種の数が減ったことがわかる。

研究トピックス