東京大学 大気海洋研究所50年史 1992-2001 東京大学 大気海洋研究所50年史 1992-2001

第2章 海洋研究所の活動の展開と柏キャンパスへの移転

2-4 学術研究船の移管

2-4-2 運航体制(2004年4月~)

このような経緯を経て2004年4月,本所の全国共同利用の施設として運航されていた白鳳丸・淡青丸は2004年度から乗組員とともに機構に移管され,本所と機構との共同での新しい運航体制のもとで,年間300日の研究航海を実施することになった.新体制の骨子は以下の通りである.

共同利用の形態:本所は単独あるいは研究グループでの利用申込を受けて,審査した後,採択された研究課題による研究航海の組織(観測機器の貸し出し,船上での技術支援,旅費支給など)およびその成果の取りまとめに中心的役割を果たす.

業務の分担:研究船の運航計画においては海洋科学における全国共同利用研究所である本所が全国の大学などの海洋研究者の意見を集約して運航計画を策定し,機構はそれを尊重して運航の責任にあたる.また,両船の運航日数を300日位まで拡大し,研究支援に関しても最大限配慮し,さらに淡青丸に関しては文科省が責任を持って代船建造にあたる.

このような合意を受けて,本所は,外部の委員と所内の委員で構成される共同利用運営委員会を廃止して,新たに研究船の運営のための研究船共同利用運営委員会を設置し,その中の運航部会で全国の海洋研究者の意思を反映した研究計画にもとづく研究船の運航計画を策定することになった.白鳳丸では3カ年計画とそれにもとづく各年の具体的な運航計画,淡青丸に関しては各年の具体的な研究・運航計画をここで策定することとした.研究船の共同利用で使用される観測機器の保守管理,船上での研究支援,連絡調整等の業務については1967年6月より観測機器検査室(1972年から観測機器管理室)が担当してきたが,両船の航海日数の大幅な増加に対応するため,2004年2月に観測機器管理室を拡充し,観測研究企画室に改組した.本室には観測機器の管理と船上での研究支援を担当する技術班,研究航海の総合的企画を任務とする企画班,研究船で得られたデータの管理と貸し出しや情報発信を行う管理班が設けられ,共同利用の事務的な面を支援する事務部とともに共同利用による研究船運航全体を支援する体制を作った.さらに,2010年には大気海洋研究所の発足にともない,本室の業務は新たに設置された共同利用共同研究推進センター[➡3―2―5]の研究航海企画センターと観測研究推進室に継承・拡充された.

しかし,本学と機構とで交わした「覚書」については,以下に示すように,必ずしも実行されているとは言いがたい部分もある.

  • 運航日数は,油価の高騰などの事情も絡んで次第に減少し,例えば2012年度の航海日数として機構から提示されたのは淡青丸・白鳳丸それぞれ270日,250日であった.
  • 船員は適切に補充されることなく減少している.

国の財政が逼迫して機構への予算も減っているものの,緊縮的な国家財政事情は移管前からも双方の認識となっていた.それによって生じる共同利用・共同研究航海への影響を最小限にする努力が今後も必要とされている.