東京大学 大気海洋研究所50年史 1992-2001 東京大学 大気海洋研究所50年史 1992-2001

第3章 大気海洋研究所の設立への歩み

3-2 研究組織の改組

3-2-5 共同利用共同研究推進センターの設置

海洋研究所は,1962年4月の設置以来,研究船,中野キャンパスの陸上施設および岩手県大槌町の国際沿岸海洋研究センター(旧大槌臨海研究センター)を用いた共同利用を通じてわが国の海洋科学の発展に貢献してきた.これは本所の技術系職員の働きによるところが極めて大きい.例えば船舶上では様々な観測機器類が使用されるが,それらのノウハウは船員や職員の技術と経験に依存しており,それなしには信頼性の高い結果を得ることはできない.観測・採集作業のみならず,船舶の維持,管理,あるいは観測機器類の点検,保守,修繕などにも経験と技術,熟練が求められる.また,技術系職員は陸上施設においても電子顕微鏡や質量分析計などに代表される高度な分析機器類の操作と保守,ガラスや金属を用いた機器類の工作,海洋生物の飼育・維持などに貢献してきた.これらの技術系職員は長年,各分野に所属しながら必要な技術を提供してきた.しかしながら,近年定員削減によって個々の分野でそうした技術系職員を維持することが困難になるとともに,限られた職員を組織化し,共同利用・共同研究拠点に求められる業務を適切かつ効率よく行っていくことが必要になった.また,全学的にも技術系職員の組織化の動きが出ていた.

こうした背景のもと,2010年4月に海洋研究所と気候システム研究センターが統合して大気海洋研究所となり,また同時に新たに共同利用・共同研究拠点として認可されたことに伴い,観測研究企画室と各分野に所属する技術職員組織を改組し,新たに共同利用共同研究推進センター(以下,推進センター)が発足した.初代推進センター長には新野宏副所長が就任した.センター発足にあたっては2008年より将来構想委員会およびそのもとに設けられた各ワーキンググループにおいて教員と技術系職員が一緒になって議論を重ね,所内外の新たなニーズや後継者の養成も念頭に置きつつ,組織構成や業務・運営のあり方を検討してきた[➡3―1―4].2010年3月に推進センター準備ワーキンググループから出た最終報告書では,推進センターの業務について,「大気海洋研究所の共同利用・共同研究拠点としての活動を推進するために,学術研究船および柏地区・大槌地区の研究施設を利用した共同利用共同研究に参加する全国の研究者の支援を行うと共に,所内の研究施設・試資料・情報の管理および各研究部門・各研究センターにおける研究の技術支援を行うこと」とされた.

推進センターは,研究航海企画センター,観測研究推進室,陸上研究推進室,沿岸研究推進室から構成されている[➡0―4―3(2)表].各室にはそれぞれ所長が委嘱する室長と室長補佐を置く.室長は将来的には技術系職員を想定するが,当面は教授会メンバーが務め,技術系職員が室長補佐を務めることとした.室員は技術専門員,技術専門職員,技術職員に加え,特任専門職員,研究支援推進員によって構成されている.各室にはそれぞれ教員若干名と所属の技術系職員で構成する室運営委員会が置かれ,室の活動方針の審議,所内外から要請のあった支援業務への対応の審議,ユーザーとの意見交換,技術系職員の業務配分・スキルアップ・研修・学会参加などの支援を行っている.

4つの組織のそれぞれの役割および発足当時の構成員は以下の通りである.

研究航海企画センター

研究航海公募の実施,審査,船票素案の策定に関し研究船共同利用運営委員会を補助するとともに,策定された研究航海案を実行に移すために,研究者,研究船,海洋研究開発機構,関連省庁などとの連絡・調整を行い,具体的な航海,観測計画を作り上げる.さらに航海で得られた基本データに関して収集・保存を行う.構成員:(センター長)小島茂明,(同補佐)稲垣正,(研究支援推進員)稲葉不二夫,兼子康雄,(事務補佐員)小林素子.

観測研究推進室

本所は学術研究船の淡青丸・白鳳丸における研究計画立案および観測の実施に責任を持っている.このためにCTDをはじめとした各種共通観測機器類の選定,購入と更新,保守等の作業を行う.さらに研究船に乗船して観測補助・技術指導を行っているが,限られた数の室員で行っていく負担がかなり大きくなりつつある.構成員:(室長)津田敦,(同補佐)北川庄司,(技術専門職員)田村千織,(技術職員)石垣秀雄,小熊健治,亀尾桂,杢雅利,長澤真樹,(研究支援推進員)今野啓,桐ヶ谷信一,西浦力雄.

陸上研究推進室

旧中野キャンパスあるいは柏キャンパスには,電子顕微鏡,電子計算機,遺伝子実験施設,飼育実験施設,RI実験施設,低温施設などの多くの実験施設あるいは分析機器類が備わっている.これらは所内外の多くの研究者や大学院学生に利用されており,そのための機器の保守,管理,更新などを行うとともに,技術指導なども行っている.構成員:(室長)兵藤晋,(同補佐)塚本久美子,(技術専門員)松本町子,小笠原早苗,(技術専門職員)早乙女伸枝,森山彰久,(技術職員)石丸君江,大矢眞知子,原政子,棚橋由紀,渡邊太朗,(特任専門職員)石川浩治.

沿岸研究推進室

国際沿岸海洋研究センター(以下,沿岸センター)は,全国から年間約3000人・日の利用がある.そのほとんどが数日から1週間程度滞在し,沿岸センターの諸施設,とりわけ屋外水槽を使った飼育実験や船舶を使った湾内の観測などを頻繁に行ってきた.本室では,これらの施設を恒常的に最適な状態に維持・管理し,共同利用で訪れた研究者や大学院学生に提供している.構成員:(室長)佐藤克文,(同補佐)黒沢正隆,(技術専門職員)盛田孝一,(特任専門職員)平野昌明.