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大きな地震も小さな地震と同様にランダムに発生する?―重要な高精度年代測定による過去の地震イベント復元―

2026年3月3日

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発表者

横山 祐典 海洋底科学部門/先端分析研究推進室 教授/室長

成果概要

東京大学大気海洋研究所の横山祐典教授はイギリス極地研究所のGhazoui博士らのチームと共にネパールの湖に記録された過去の大地震の記録を、加速器質量分析装置(AMS)による高精度の年代測定、数値シミュレーションそして統計解析を用いて解析を行いました。その結果、これまで周期的に起こると考えられていたこの地方の巨大地震の頻度が確率論的に起こっていることを突き止めました。同じ手法を用いて南米チリやニュージーランド、インドネシアの過去の地震についても解析を行ったところ、同様にランダムな発生頻度が確認されました。

この結果は、大規模な地震の発生も小さなものと同様に確率論的に起こりうることを示唆したものであり、防災や減災対策の重要性を再認識させるものです。この成果は2026年2月11日付の米国学術誌「Science Advances」に掲載されました。

発表内容

【研究の背景】
地震の規模と頻度についての研究は、将来起こりうる災害の対策を練る上で極めて重要な情報です。現在では世界中に設置された地震計でデータが蓄積されていますが、その解析結果によると周期的というより確率論的な周期で繰り返されているという知見が提示されてきました。しかし、これらの記録は過去100年間遡れるかどうかといったところが現状であり、データの数も限られています。一方、地質学的な記録を用いた研究では周期的、もしくは準周期的な再来頻度が報告されており、ヒマラヤの地震についても同様の指摘がなされてきました。

【研究内容】
そこでイギリス極地研究所のGhazoui博士と東京大学大気海洋研究所の横山祐典教授らのチームは、ネパールの湖に記録された過去の大地震の記録を、加速器質量分析装置(AMS)による高精度の年代測定、数値シミュレーションそして統計解析を用いて分析を行いました。チームが研究に用いたのはネパール最大の湖であるララ湖(注1)の湖底から採取した堆積物試料です。ララ湖では、地震の規模がM6.5を超える地震でタービダイト(注2)と呼ばれる地滑りの層が形成され、X線を用いた分析により、過去6,000年間に50層もの層が確認されました。またそれらの発生のタイミングを、年代測定によって詳しく調べ統計解析を行いました。その結果、この地域ではこれまで周期的に起こると考えられていたこの地方の巨大地震の発生間隔が確率論的周期であったことを突き止めました(図1)。またチームは、同じ手法を用いて南米チリやニュージーランド、インドネシアの過去の地震についても解析を行いました。ネパールとチリやニュージーランドなどはネパールが位置するプレート境界とはタイプが異なる場所です。湖や海の堆積物試料に残されたタービダイトの記録や断層を横切る形で掘削したトレンチと呼ばれる大規模な溝を調べた既報研究の結果について調べたところ、ネパールと同様にランダムな発生頻度が確認されました。

【社会的意義】
この結果は規模の大きな地震の発生も小さなものと同様にランダムで起こりうることを示唆したものであり、防災や減災対策の重要性を再認識させるものです。一方で既存の先行研究で行われた年代測定については誤差が大きなものも存在するため、より詳細な年代測定を、最新の小型の加速器質量分析装置を使って研究を行う重要性が求められるものです。本研究結果は、より長期の災害の発生頻度と規模について、詳細な化学分析に基づいたデータを取得していくことが、将来の防災や減災の方針に繋げられることを示唆するものです。

本研究の一部は、以下の研究サポートによって実施されました。
科研費Japan Society for the Promotion of Science 24H00094, 23KK0013.

図1 堆積物コアなど地球科学的手法を用いた過去のイベントの周期性

発表雑誌

雑誌名:Science Advances(2026年2月11日)
論文タイトル:Occurrence of major earthquakes is as stochastic as smaller ones 
著者:Ghazoui, Z., Grasso, J.-R., Watlet, A., Caudron, C., Karimov, and Yokoyama, Y. 
DOI番号:10.1126/sciadv.adx7747 
アブストラクトURL:https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.adx7747このリンクは別ウィンドウで開きます

用語解説

注1 ララ湖
ヒマラヤ山脈の山岳地帯に位置するネパールにある最大の湖。長径が5kmを超え、最大水深167mの湖。
注2 タービダイト
海底地滑りや湖底地滑りによって堆積物が流体によって一気に流れ下って形成された堆積層。堆積する際に粒度の大きい粒子が下位に、細粒の粒子が上位に堆積する層を形成します。

問い合わせ先

横山 祐典(よこやま ゆうすけ)
海洋底科学部門 教授
yokoyamaaori.u-tokyo.ac.jp

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