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海洋細菌由来新規ロドプシンによる、光によってナトリウムイオンを細胞外へと運び出す仕組みの解明

2015年5月21日

吉澤 晋・木暮一啓(東京大学大気海洋研究所)ほか

これまで太陽の光エネルギーを利用している海洋生物は、クロロフィルを持つ光合成生物、すなわち植物や植物プランクトンとの考えが常識でした。しかしながら近年の研究から、光を用いて水素イオン(H+)を輸送することで太陽の光エネルギーを利用するプロテオロドプシンと呼ばれる光受容タンパク質が海洋表層に生息する細菌の間に普遍的に存在することが示され、この常識は崩れつつあります。また、2013年に光エネルギーを用いてナトリウムイオン(Na+)を輸送するロドプシン、2014年には塩化物イオン(Cl-)を輸送するロドプシンが海洋細菌から相次いで見つかり、海洋細菌の光エネルギー利用がこれまで考えられていた以上に多様であることが分かってきました。

今回、東京大学大気海洋研究所、地球表層圏変動研究センターの吉澤晋講師、木暮一啓教授らは、東京大学大学院理学系研究科の濡木理教授、名古屋工業大学大学院工学研究科の神取秀樹教授を中心とする研究グループと共同で、X線結晶構造解析の手法を用いてNa+を輸送するロドプシン(KR2)の立体構造を「光が当たる前の状態」と「光が当たった後(と類似)の状態」の2状態で決定することに成功し、Na+輸送メカニズムを明らかにしました(図)。

21世紀になってこのような全く新しい光エネルギーの利用メカニズムが明らかにされることは驚きです。また、この結果は、Na+に富む環境下に生息する海洋生物にはまだ未知のイオン代謝メカニズムがあることを示唆します。

詳しくはこちらをご覧下さい。
http://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/5584/
 

雑誌名: Nature(2015年4月6日)
論文タイトル: Structural basis for Na+ transport mechanism by a light-driven Na+ pump
著者: 加藤 英明、井上 圭一、吉住 玲、加藤 善隆、大野 光、今野 雅恵、細島 頌子、石塚 徹、Mohammad Razuanul Hoque、國友 博文、伊藤 淳平、吉澤 晋、山下 恵太郎、武本 瑞貴、西澤 知宏、谷口 怜哉、木暮 一啓、Andrés D. Maturana、飯野 雄一、八尾 寛、石谷 隆一郎、神取 秀樹*、濡木 理* (*責任著者)
DOI番号: 10.1038/nature14322
要約URL: http://www.nature.com/nature/journal/v521/n7550/full/nature14322.html

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