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紀伊半島沖南海トラフの3次元地殻構造イメージング

2008年1月

海洋科学国際共同研究センター 研究協力分野

紀伊半島沖南海トラフ付近の海底地形と3次元反射法地震探査域(赤色実線ボックス)の位置


 

(1)研究の背景

 南海トラフでは、フィリピン海プレートがユーラシアプレートの下部に沈み込むことで、マグニチュード8クラスの海溝型巨大地震が約100年から200年の間隔で繰り返し発生している。特に、紀伊半島南東沖では1944年東南海地震(マグニチュード8.1)が発生し、近年、東南海地震時の破壊伝搬との関連性が考えられる分岐断層が発見されるなど、地震発生帯の理解に重要な成果が続々とあげられている。 

 統合国際深海掘削計画(Integrated Ocean Drilling Program:以下IODP)では、2007年秋頃から紀伊半島南東沖の東南海巨大地震断層(巨大分岐断層とプレート境界断層)をターゲットとした南海トラフ地震発生帯掘削計画(Nankai Trough Seismogenic Zone Experiment:以下NanTroSEIZE)を開始した。 

 NanTroSEIZEでは、四国海盆から南海トラフを経て熊野前弧海盆まで至るコリドー上の8ヶ所(図1)で掘削を行う予定である。我々の研究グループは2006年、紀伊半島南東沖南海トラフの付加体先端部から海側の四国海盆まで至る海域(図1)において高精度地殻構造イメージングを目的とした3次元マルチチャンネル反射法地震探査(3D Multi-channel Seismic reflection survey:以下3D MCS)を実施した。 

 この3D MCS調査域は、NanTroSEIZEの南海トラフ海側掘削サイトをカバーするように計画されている(図1の赤色実線ボックス参照)。ここでは主に3D MCSデータを用いた地殻構造イメージング結果について述べる。この研究は、海洋研究開発機構の地球内部変動研究センターと共同で行った。

紀伊半島沖南海トラフ付近の海底地形と3次元反射法地震探査域(赤色実線ボックス)の位置

図1:紀伊半島沖南海トラフ付近の海底地形と3次元反射法地震探査域(赤色実線ボックス)の位置

黒丸はNanTroSEIZEの掘削サイト

 

(2)今回の成果

船上処理を終えた3D MCSデータを対象に、陸上では標準的なデータ処理流れに従い、3次元データ処理を実施した。まず、ノイズ抑制・除去処理、分解能向上処理などの前処理やフレックスビンニング処理を実施した後、重合速度解析を行い、初期の3次元速度構造モデルを構築した。3次元重合前時間マイグレーションや3次元重合前深度マイグレーションを繰り返すことで、最終的な3次元区間速度構造モデル(図2)を構築した。この3次元速度構造モデルを用いた3次元重合前深度マイグレーションを行い、最終的に3次元高精度地殻構造イメージを得ることに成功した。速度構造モデルは、地殻構造イメージの質を決めるだけではなく、地殻の物性値としても使用できるため、最終3次元速度モデルの信頼性を検討する必要がある。速度不確定性を推定するために行った3次元重合前深度マイグレーション速度テストの結果より、最終速度モデルは、約6 kmの深度において最大±5%の速度不確定性を持つことがわかった。

最終的な3次元区間速度構造モデル

図2:最終的な3次元区間速度構造モデル

 

(3)意義と展望

得られた3次元地殻構造の解釈の結果、南海トラフ底で沈み込んでいる、3つの音響ユニットから成る四国海盆堆積層の層厚変化が明らかとなった(図3)。特に、最上位のユニットCは、トラフ底から陸側への有意義な層厚増加や背斜構造によって特徴付けられ、また、ユニットCの中央には強振幅の反射面Rの存在が認められる。この反射面Rは斜めスリップ断層面として解釈され、このスラスト断層運動によって、ユニットCが重なり、陸側へ厚くなっていることが考えられる。今回得られた3次元地殻構造・速度データとNanTroSEIZE掘削結果との統合処理を行い、南海トラフの地震発生帯に沈み込む四国海盆堆積物の役割を明らかにすることは今後の重要な課題である。

Inline 95に沿った3次元重合前深度マイグレーション断面図(上)と解釈図(下)

図3:Inline 95に沿った3次元重合前深度マイグレーション断面図(上)と解釈図(下)

 



参考文献 


1. 朴進午、鶴哲郎、野徹雄、瀧澤薫、佐藤壮、金田義行、紀伊半島南東沖南海トラフでの高分解能3次元反射法地震探査と重合前深度マイグレーション処理、物理探査(印刷中)。 

2. 金田義行、朴進午、尾鼻浩一郎、木下正高、堀高峰、小平秀一、金沢敏彦、篠原雅尚、酒井慎一、山田知朗、2004 年紀伊半島南東沖地震震源域の地殻構造と余震分布について、地震2、59、187-197、 2006. 

3. Park, J.-O., G. Moore, T. Tsuru, S. Kodaira, and Y. Kaneda, A subducted oceanic ridge influencing the Nankai megathrust earthquake rupture, Earth and Planetary Science Letters, 217, 77-84, 2003. 

4. Park, J.-O., T. Tsuru, S. Kodaira, P. R. Cummins, and Y. Kaneda, Splay fault branching along the Nankai subduction zone, Science, 297, 1157-1160, 2002.

研究トピックス