東京大学 大気海洋研究所50年史 1992-2001 東京大学 大気海洋研究所50年史 1992-2001

序章 発足からの50年間をふりかえって

0-4 大気海洋研究所の小史

0-4-1 設立までの経緯(~2010年3月)

海洋研究所と気候システム研究センターの連携は2000年ごろ,小池勲夫所長と住明正センター長の時代から検討されていた.しかし,両組織の規模,設立趣旨,背景となる研究コミュニティに違いがあり,すぐには実現に至らなかった.

統合の準備が具体化したのは,2007年5月ごろの西田睦所長と中島映至センター長の話し合いがきっかけであった.おりしも,法人化した東京大学の第1期6年の「中期目標・中期計画」期間の半ばとなり,海洋研究所と気候システム研究センターともに活動や組織をよりダイナミックに展開させる必要性を感じるようになっていた.両組織は,海洋現場での観測を重視する海洋研究所とモデリングを基盤とする気候システム研究センターが連携することにより,海洋・気候研究を相補的かつ相乗的に深化できると考えた.同年9月,第1回「海洋研究所・気候システム研究センター連携に関する懇談会」が開催された.この懇談会の開催は2008年11月まで計12回に及んだ.

両組織ともに全国共同利用施設であったが,大学単位で法人化したことにより同施設設置の法的根拠を失ってしまった.文部科学省は2008年7月に「全国共同利用」システムを「全国共同利用・共同研究拠点」システムに転換する規定を施行した.この拠点に認定された研究組織は国立大学法人第2期(2010年4月~2016年3月)中期目標・中期計画に記載されてはじめて法的根拠を有することになる.これへの対応は両機関の連携のよりどころの1つであった.

2008年5月,両組織は連携に関する動きを大学本部に報告した.小宮山宏総長は早速に両組織の連携に関する総長諮問委員会(委員長:平尾公彦理事・副学長)を設置した.同年8月,小宮山総長は,上記諮問委員会の答申を受け,同年8月に「海洋研究所と気候システム研究センターとの連携が望ましい形は両者の統合であり,問題を解決しつつその方向に進むことを勧める」旨の文書を両組織に送付した.小宮山総長の後任として2009年4月に就任した濱田純一総長と新執行部から統合に向けて多大の支援を得た.両組織は統合を承認し(海洋研究所:2008年9月臨時教授会,気候システム研究センター:同年10月運営委員会),新研究所の名称を「大気海洋研究所」とすることに合意した(海洋研究所:2009年3月教授会,気候システム研究センター:同年6月運営委員会).外部委員を含む両組織の運営に関わる委員会(協議会,運営委員会),両組織の基盤的な研究コミュニティである日本海洋学会,日本水産学会,日本気象学会など13学会からも連携について賛同を得た.2009年6月,大気海洋研究所が本学の次期(2010年4月~2016年3月)中期目標・中期計画案に記載された.同月,文部科学省は新研究所を,共同利用・共同研究拠点として,大気海洋研究拠点に認定した.こうして大気海洋研究所設立の基礎固めが完了した.

設立までの経緯は第3章に詳述されているが,大気海洋研究所ニュースレター『Ocean Breeze』第1号の「創刊の辞 海洋×大気 無限の可能性をひらく」にも記されている.