東京大学 大気海洋研究所50年史 1992-2001 東京大学 大気海洋研究所50年史 1992-2001

序章 発足からの50年間をふりかえって

0-2 海洋研究所50年間の小史

0-2-1 設立までの経緯(~1962年3月)

「海洋に関する基礎的研究を行う」ことを目的とする海洋研究所は,国の要請を受けて1962年4月に設立された.以下に設立までの経緯について述べる.

日本が国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)に加盟した時(1951年),ユネスコ国内委員会は海洋の持つ意義を述べ,ユネスコを通じて国際的基盤の上で海洋研究がなされなければならないことを強調した(茅誠司元総長「東京大学海洋研究所の発足するまで」,『東京大学海洋研究所15年史』より).このような動きは直ちに実を結ばなかったが,国立の海洋研究所設立への関心は高まっていった.1958年1月,日本海洋学会と日本水産学会は連名で海洋総合研究所設立について日本学術会議に建議した.同年4月,日本学術会議は,第26回総会において,「海洋を積極的に開発し,その合理的な利用を図るため,海洋及びその資源に関する基礎的研究を総合的に行う」ことを目的とする研究所を設立すべきことを議決した.同年5月,日本学術会議会長は科学技術庁長官に「海洋総合研究所(仮称)設立について」の要望書を提出した.同年8月,科学技術庁長官は文部大臣に「海洋に関する自然科学の基礎研究を行う研究所の設立は望ましい.その設置の具体化にあたっては文部省に所属することが望ましい」旨を通知した.1961年2月,本学の理学部・農学部・地震研究所の有志は「海洋総合研究所の組織規模に関する構想(21部門案)」を提出した.同年6月,国立大学研究所協議会会長は「この研究所は15研究部門よりなり,大型及び小型の研究船を保有する東京大学附置の共同利用研究所とすることが適当である」旨を文部省学術局長に報告した.本学が受け入れを定めた段階で研究所の名称は海洋研究所となった.1962年1月,総長は文部大臣に海洋研究所設立についての申請書を提出した.ただし,海洋研究所設立への道のりは決して平坦ではなかった.これについては,『東京大学海洋研究所15年史』の「回顧」と『東京大学海洋研究所30年史』の「寄稿」を読むと,日高孝次初代所長はじめ関係者の並々ならぬ尽力の様子をうかがい知ることができる.