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山崎俊嗣教授が国連大陸棚限界委員会(CLCS)委員に再選

更新日:2022年06月21日

(2022年6月16日)

「大陸棚」は陸から続く浅くて平らな海底だと習いませんでしたか? 国際的な取り決めではこれとは少し違い、「大陸棚」を各国の権利の及ぶ範囲として、どこまでを「大陸棚」とするかを国連の委員会−国連大陸棚限界委員会(CLCS)が審議しています。海洋底科学部門の山崎 俊嗣 教授は2017年から外務省参与としてこの委員会の委員を務め、今回2期目の委員再選を果たしました。


国連大陸棚限界委員会(CLCS)とは
海の憲法とも言える国連海洋法条約では、ある地形・地質の条件を満たす範囲を、陸地の海底へ自然の延長である「大陸棚」として(地質学的な意味での大陸棚とは異なる)、200海里排他的経済水域を越えて沿岸国に海底下の管轄権を認めている。つまり、国の権益が及ぶ範囲を地球科学によって決めるということである(武力でなく!)。各国がデータに基づき申請する大陸棚の範囲を審査して勧告するための機関として、国連大陸棚限界委員会(Commission on the Limits of the Continental Shelf; CLCS)が設置されていて、審査には海洋底地球科学の知識が総動員される。大陸棚の境界を画定することは、その外側の人類共同の財産である「深海底」の範囲を決めることでもある。「深海底」の鉱物資源開発は、海洋法条約のもと国際海底機構(International Seabed Authority: ISA)により管理される。大陸棚限界委員会は地質学・地球物理学・水路学を専門とする21名の委員からなり、海洋法条約締約国の選挙により5年毎に改選される。委員会は年3回、各7週間ニューヨークの国連本部で開催されている。

2期目の課題について
海洋法条約が1982年に採択、1994年に発効し、2001年に最初の申請が提出されてから20年以上になり、すでに100を越える申請が提出されている。しかし、勧告済み及び審査中の申請は、その半数に満たず、最近提出される申請は10年以上審査開始まで待たなければならない状況にある。これは、大陸縁辺部の地形・地質が、当初の想定よりはるかに複雑であったことにもよるが、審査のスピードアップは待ったなしである。それには、申請国と委員会の相互信頼に基づく緊密な協力が不可欠である。また、コロナ禍により審査を1年半ストップせざるを得なかった。守秘義務の観点から現在の手続規則はリモートでの審査を想定していないが、一部の仕事はリモートで可能とすることもスピードアップのため必要であろう。海洋法条約における大陸棚限界に関する規定は、1980年頃までの大西洋型の非活動的大陸縁辺に関する地球科学的知識が基になっている。その後の海洋調査技術の進歩などにより、新しい概念や知識が蓄積しているなかで、最新の科学的知見を審査・勧告に取り入れつつ、すでに出された勧告との整合性を保ち公平性を担保することも課題である。

なお、本小文は私個人の見解であり、CLCSとしての見解を必ずしも反映するものではない。(山崎 俊嗣)

■外務省 - 大陸棚限界委員会(CLCS)委員選挙 山崎俊嗣・東京大学大気海洋研究所教授(外務省参与)の再選
https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press6_001155.htmlこのリンクは別ウィンドウで開きます

国連大陸棚限界委員会の委員と事務局員(2020年3月に全体会合議場で撮影)。この直後にCOVID-19パンデミックとなり、活動を約1年半停止せざるを得なかったが、2021年秋より徐々に再開されている。

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