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ホットスポットはマントルの流動に影響されて個別に移動している

2012年11月27日

山崎 俊嗣(東京大学大気海洋研究所)
星 博幸(愛知教育大学)

サンプル

東京大学大気海洋研究所の山崎俊嗣教授、米国オレゴン州立大学の Anthony A.P. Koppers 准教授、愛知教育大学の星博幸准教授らの研究グループは、統合国際深海掘削計画(注1)によるルイビル海山列掘削試料を用いた研究により、マントル深部から煙突状に立ち上がる上昇流であるホットスポットが、個別に移動していることを明らかにしました。プレートテクトニクス(注2)の確立以来、ホットスポットは不動である、つまりホットスポットはマントルに固定された座標系であるとして、プレートの過去の運動を求めるための基準などに用いられてきましたが、これを見直す必要があります。今後は、ホットスポットがマントルの流動により移動するというモデルに基づいて、プレート運動や真の極移動(注3)が構築されることが期待されます。

プレスリリース資料PDFファイル(1429KB)

研究の背景

ホットスポットは、マントル深部から煙突状に立ち上がるマントルの上昇流 (プルーム)であり、その上をプレートが移動することにより海底に海山列が形成されます(図1)。マントル深部に起源を持つホットスポットは地球上に10個程度存在し、その位置は不動であるものとして1960〜70年代にプレートテク トニクス(注2)が確立して以来、過去のプレート運動を知るための基準として用いられてきました。これは高校「地学」の教科書にも書かれていることです。しかし、最近になって、ハワイ・ホットスポットの軌跡である天皇海山列の掘削結果から、ホットスポットが約8000万年前から5000万年前の間に、南へ緯度で約15度(1700km)移動した可能性が指摘されました。もしホットスポットが個別に移動しているとすれば、これまでのプレートやマントルについての研究に根本的な見直しが必要となるため、他のホットスポットについての研究が待たれていました。

研究の内容

統合国際深海掘削計画(Integrated Ocean Drilling Program, 略称 IODP)(注1)第330次航海において、2010年12月〜2011 年2月に南西太平洋ニュージーラ ンド沖のルイビル海山列を構成する5つの海山の掘削が実施されました(図2)。 第330次航海では、東京大学大気海洋研究所の山崎俊嗣教授と米国オレゴン州立大学の Anthony A.P. Koppers 准教授が共同主席研究者をつとめ、愛知教育大学の星博幸准教授が古地磁気学研究者の一人として参加しました。ルイビル・ホットスポットは、ハワイ・ホットスポットと同じく太平洋プレート内にあり、 マントル底部を起源とする典型的なホットスポットと考えられています。その軌跡であるルイビル海山列を掘削して、ハワイ・ホットスポットとは独立に運動をしているのか、あるいは、真の極移動(注3)などにより両者が揃って移動しているのかを確かめることが、掘削の第一の目的でした。

溶岩が冷却して固まってできた火山岩は、それに含まれる強磁性鉱物により微弱な磁気を帯びています。この磁気の方向は、溶岩が冷却した時の地磁気(古 地磁気)の向きとなっていて、高感度の磁力計で読み取ることができます。古地磁気の伏角から、その溶岩が噴出した場所の当時の緯度がわかります。ホッ トスポットで形成された海山列では、もしホットスポットが不動なら、どの海山でも形成時の緯度はホットスポットの現在の緯度と同じになりますが、もしホットスポットが移動したなら、海山が形成された年代により形成時の緯度が異なります。掘削された試料から、ルイビル・スポットは、約7000万年前でもほぼ現在の緯度付近にあったことが明らかとなり(図3)、ハワイ・ホットスポットと揃って移動したのではない、つまりホットスポットは個別に移動することが明らかになりました。 ホットスポットが個別に移動する原因の説明としては、マントルの流動に影響されてプルームがたなびくというマントル・ウインド・モデル(注4)があります。このモデルに基づけば、ルイビル・ホットスポットは南北にはあまり動かないことが予測されていたことから、このモデルが基本的には成り立つことが確かめられました。

今後の展望

今回の研究成果をもとに、今後、マントルの流動によりホットスポットが移動することを取り入れた新しいプレート運動像が構築されると考えられます。 プレート運動は、地震・火山噴火をはじめとする地球の様々な変動の原動力であり、地球の変動についての理解がより深まると期待されます。より高精度のモデルを構築するためには、大西洋やインド洋に存在するホットスポットの運動の実態についても調べる必要があり、将来 IODP で掘削することが検討されています。また、真の極移動の実態についても、従来はホットスポットが不動であるものとして構築されていたため、今後見直されることになります。

 

発表雑誌

雑誌名:Nature Geoscience, オンライン 11 月 25 日 論文タイトル:Limited Latitudinal Mantle Plume Motion for the Louisville Hotspot 著者:Anthony A.P Koppers, Toshitsugu Yamazaki, Joerg Geldmacher, Jeffrey S. Gee, Nicola Pressling, Hiroyuki Hoshi, and

注意事項

特になし

問い合わせ先

山崎 俊嗣(やまざき  としつぐ) 東京大学大気海洋研究所  海洋底科学部門  教授 
〒277-8564 千葉県柏市柏の葉 5-1-5
Tel: 04-7136-6130, Fax:04-7136-6148
e-mail: yamazaki★aori.u-tokyo.ac.jp(★を@に変えてお送り下さい)

星  博幸(ほし  ひろゆき) 愛知教育大学  准教授
〒448-8542 愛知県刈谷市井ヶ谷町広沢1
TEL/FAX: 0566-26-2656
e-mail: hoshi★auecc.aichi-edu.ac.jp(★を@に変えてお送り下さい)

 

用語解説

(注1)統合国際深海掘削計画

統合国際深海掘削計画(IODP)は、深海底を掘削することにより、地球環境変動の解明、地震発生メカニズムの解明および地殻内生命の探求等を目的とし た国際研究協力プロジェクト。2003年10月 1日より日本と米国の主導によって開始され、現在、26カ国が参加。日本では、独立行政法人海洋研究開発機構が地球深部探査船「ちきゅう」をIODPに提供するとともに、日本国内の研究者のIODPへの参加に関わる支援等国内におけるIODPの総合推進を実施している。

(注2)プレートテクトニクス

地球表層は、十数枚のプレートと呼ばれる岩盤で構成されていて、それらの相対運動により地震や火山活動が起きているとする理論。

(注3)真の極移動

地球のコア(核)に対して地殻とマントル全体が一体として移動すること。
コアで生成される地磁気の極が地殻に対して移動するように観測されることから、このように呼ばれる。地殻変動による見かけ上の地磁気極の移動と区別するために「真の」極移動と呼ばれる。

(注4)マントル・ウインド・モデル

マントルは固体の岩石から構成されるが、年数センチメートル程度の速度で、地質学的時間スケールにおいては流動する。太平洋域では、地球表層では太平洋プレートが北西方向へ移動しているが、北太平洋下のマントル深部では逆に概ね北から南へ流動していると考えられている。マントル・ウインド(Mantle wind)モデルは、マントル内を上昇するプルームがこのマントル深部の流動に支配されてたなびくとするモデルであり、ハワイ・スポットは北から南へのマントル流動により南へたなびくが、南太平洋のルイビル・ホットスポット付近ではマントル流動の南北成分は小さいとされる。

 

添付資料

図1 (a) 古典的なホットスポット・モデルによる海山列形成のイメージ、
(b) アナログ実験による、マントル上昇流(プルーム)のイメージ。

図2  (右上)ルイビル海山列、ハワイ・天皇海山列の位置。
(左下)IODP 第 330 次航海における掘削地点(U1372〜U1377)。

図3 ルイビル海山列から掘削された岩石試料の古地磁気伏角測定結果。測定方法が異なる赤と青の2種類のデータセットは、ルイビル・ホットスポットの現在の位置における地磁気伏角の値(約-69 度、灰色の線)と誤差の範囲内で一致し、これはルイビル・ホットスポットの南北の移動が小さかったことを示している。

プレスリリース