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所長挨拶

大気海洋科学の発展と人新世の課題解決に向けて

東京大学大気海洋研究所 所長 兵藤 晋

大気海洋研究所は、2010年に海洋研究所(1962年設立)と気候システム研究センター(1991年設立)が統合して設立されました。地球表層を覆う海洋と大気の構造や変動メカニズム、および海洋生物に関する基礎的研究を推進するとともに、地球環境の変動や海洋生物群集の変動など、人類と生命圏の存続にとって重要な課題の解決につながる研究を展開してきました。人間活動は地球環境に大きな影響を与え、地球温暖化や極端気象の増加、マイクロプラスチック等の海洋汚染、生物多様性の低下、水産資源の変動など、さまざまな地球環境問題が顕在化し、それらへの対応が急がれる中、私たちが科学を通じて果たすべき役割はますます重要になっています。大気海洋研究所は、各教員のボトムアップによる先端研究を展開して地球環境や海洋生物群集に関する理解を深めると同時に、科学的知見に基づいた施策の提示を目指して課題解決型研究にも力を入れています。

当研究所は、国内で唯一の大気海洋研究に係わる共同利用・共同研究拠点です。本所(柏キャンパス)と附属国際・地域連携研究センター地域連携研究部門大槌研究拠点(岩手県大槌町)では外来研究員を受け入れ、全国の研究者に先端的な研究施設・機器と充実した研究環境を提供します。また、海洋研究開発機構の所有する2隻 の学術研究船「白鳳丸」と「新青丸」および深海潜水調査船支援母船「よこすか」を用いた共同利用・共同研究を企画・運営し、全国の研究者による研究航海を実施、観測支援することで大気海洋科学の発展に貢献してきました。次世代を担う若手研究者の育成も私たちの重要なミッションであり、東京大学の附置研究所として大学院教育にも力を入れています。

これらの使命達成のため2022年には大規模な組織改編も行いました。共同利用・共同研究推進センターは、先端分析から陸上・船舶共同利用に関する支援業務を一元的に管理・運営できる組織になりました。本センターには新たにオープンサイエンス推進室を設置し、データの管理・運用・公開を推進します。亜寒帯から温帯・亜熱帯が連続する我が国の生態系を包括的に理解し、温暖化等による影響評価と対策を進めることは重要です。そのために、附属国際・地域連携研究センター地域連携研究部門には奄美研究拠点準備室を新設し、これまで進めてきた亜寒帯研究に加えて亜熱帯研究を展開しています。また、これまで震災復興を目的として展開してきた地域連携活動「海と希望の学校」を、三陸だけでなく奄美研究拠点にも展開し、海とともに地域が元気になる活動を進めています。東南アジアや環太平洋諸国を中心に、国際連携活動の強化も図っています。

これらの活動を通して、SDG13「気候変動に具体的な対策を」、SDG14「海の豊かさを守ろう」、「持続可能な開発のための国連海洋科学の10年(2021-2030年)」で掲げられた目標を実現し、グローバルコモンズである地球の持続的な利用に貢献することを目指します。今後とも皆様のご支援・ご協力を賜りますよう、お願い申し上げます。

(令和5年4月1日)