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沿岸センター活動支援プロジェクト(東京大学基金)

沿岸センター活動支援プロジェクトとは

本プロジェクトは、2011年3月11日に発生した平成23年東北地方太平洋沖地震により被災した、岩手県大槌町にある東京大学大気海洋研究所附属国際沿岸海洋研究センター(以下、沿岸センター)の活動を支援する東京大学基金のプロジェクトです。

沿岸センターが取り組む活動

沿岸センターは、1973年に岩手県上閉伊郡大槌町に設置されて以来、沿岸海洋研究を活発に進めるとともに、共同利用施設として、国内外の多くの研究者や学生に活用されてきました(年間約4,000人日)。東日本大震災を受けて、沿岸センターが取り組むべき3つの柱は、1.地域とともに歩むこと、2.人が交流する場所であること、3.世界を牽引するサイエンスを生むことであると考えています。豊かな東北の海を取り戻すため、海洋環境や生態系に関する調査・研究・人材育成の中心的役割を担う決意を固めています。

なぜ活動支援が必要か

大気海洋研究所では、沿岸センターの研究活動の再開に向けた取り組みを開始していますが、沿岸センターの再建(※)と未曾有の出来事に対応した発展的な研究活動の支援に向けた環境整備を行うためには、少なくとも数年規模の時間と多額の費用が必要となります。そこで、この沿岸センターの研究活動を支援するための基金を設けることとしました。
※沿岸センターの再建に関して、2018年2月に新しい研究実験棟・宿舎棟が竣工しました。

被災前の沿岸センター

研究実験棟を飲み込む津波

大槌湾の対岸に打ち上げられた沿岸センターの調査船「チャレンジャー二世」

所長からのメッセージ

大気海洋研究所長 河村 知彦

東京大学大気海洋研究所附属国際沿岸海洋研究センター(以下、沿岸センター)は、2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震によって壊滅的な被害を受けましたが、皆様のお陰をもちまして、2018年2月末に新しい研究実験棟(3階建、床面積2,700㎡)および共同研究員宿泊棟(平屋建、床面積580㎡)が竣工しました。7月20日には多くの来賓をお迎えし、大槌町内のホテルで新棟完成記念式典・祝賀会が開催されました。

新しい研究実験棟と宿泊棟は、旧敷地より数百メートル山側に再建されました。研究実験棟のエントランスホールと隣接するギャラリーは、誰もが自由に出入り可能なスペースとし、地域の皆様との交流を深めるために活用したいと考えています。ホールには、新進気鋭の現代アート作家、大小島真木さんによる天井画「Archipelago of Life 生命のアーキペラゴ」が描かれ、絵の中の海の生物たちの世界を楽しんでいただけます。大きな窓と広い廊下が特徴的な実験棟の海側の窓から見える大槌湾とひょうたん島の景色はまさに絶景です。世界中から集う海洋研究者が、この絶景を眺めながら多くの素晴らしい研究を展開することを期待します。旧研究実験棟は解体され、その跡地には現在、水槽実験施設の再建工事が行われています。そこには、小さな展示施設「海の勉強室」が併設され、沿岸センターの研究紹介、大槌湾の環境や生物の解説、標本展示などを常設し、地域の皆様や大槌を訪れる人たちに気軽に立ち寄ってもらえる、大槌や三陸の海のことを楽しく知ってもらえる場所にしたいと考えています。

沿岸海洋研究における沿岸センターの役割は、津波被災地に立地していることによって、これまでよりさらに一層大きくなったと言えます。大地震と大津波は直接的に海洋生態系を攪乱したばかりでなく、間接的・連鎖的にも様々な影響を及ぼし、8年を経た現在でもなお生態系の変化は継続しています。沿岸域の生態系やそこに棲む生物群集は、各被災地で大規模に進められている港湾施設や防潮堤の再建などによっても新たな攪乱を受けている可能性が高いと考えます。海の生物資源を保全しながら上手に利用し続けるためには、震災によって攪乱を受けた海洋生態系が人間社会の復興と共にどう変化するのか注視していく必要があり、様々な観点からの調査、観測、研究を長期的に継続しなければなりません。震災後に三陸の海で起きている事象の詳細な科学的記録は、将来地球上のどこかで起こる同様の災害への備えや復旧・復興に役立つ重要な財産となるでしょう。沿岸センターは、共同利用・共同研究施設として、今後も国内外から様々な分野の海洋研究者を受け入れ、共同利用研究者とセンター教員との連携、あるいは共同利用研究者間の連携を推進することによって、震災後の海洋生態系の変化を総合的に記録し続けるとともに、大槌湾や三陸沿岸域の生態系理解に向けた学際的フィールド研究拠点として、さらには国際的な海洋生態系研究の拠点としての発展を目指します。

さらに今後は、地域の未来を形作る拠点としても機能し、大槌はもちろんのこと三陸全域の復興・発展に貢献したいと考えています。2018年4月からは、東京大学社会科学研究所と協同して、文理融合型の研究教育プロジェクト「海と希望の学校 in 三陸」を開始し、この研究の中核となる新たな4つめの研究室「沿岸海洋社会学分野」を設置しました。このプロジェクトでは、リアス海岸に位置する各湾、地域の海洋環境や生態系の構造を詳細に比較するとともに、海洋環境と沿岸地域の社会・産業構造や文化・風習との関係性を調べ、地先の海の持つ可能性とそれを生かしたローカルアイデンティティの再構築による地域再生の議論を喚起します。同時に、地域の復興・振興に繋がる“希望”を見いだすことのできる次世代の人材育成を目指します。科学研究と地域貢献を両輪として前進する組織となりたいと願っています。

今後も皆様の一層のご支援をお願い申し上げます。

2019年4月
大気海洋研究所長  河村 知彦
 

寄付についての詳細は、東京大学基金「沿岸センター活動支援プロジェクト」をご覧ください。