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大槌レポート[9] 沿岸センターの現状と復興への道筋

2014年7月16日

河村 知彦/国際沿岸海洋研究センター長、生物資源再生分野教授

あの大震災から3年の月日が流れました。被災地の様子を伝える報道も徐々に少なくなり、被災地から離れたところにお住まいの方は、3年も経ったのだからもうかなり復興したのだろうと思われているかもしれません。しかし実際には、多くの被災地でようやく復旧・復興工事が本格的に始まったばかりです。

大槌町においても今年になってあちらこちらで盛土工事が始まり、やっと復興が始まったことを実感できるようになりました。沿岸センターのある赤浜地区では様々な事情で工事の開始が遅れていましたが、3月末に開かれた役場から住民への説明会で具体的な復興計画案が提示されました。それによれば、沿岸センターが移転を予定している地区では今年度から地盤改良工事等が始まり、27年度末には土地造成やインフラ工事が終わって住宅着工が開始されるとの見通しです。沿岸センターの研究棟や宿泊施設の着工もこの時点で可能になりますので、完成するのは予定通り進んだとしても29年度の末頃になると思われます。

新しい研究棟と宿泊棟については、別途、所内に組織された建設ワーキンググループによって、斬新かつ地域の環境に調和した建物の案がすでに出来上がっています。実際に建設を始めるまでにはまだ解決すべき課題が残されてはいますが、ようやく具体的な地域復興計画も示され、何とか道筋が見えてきたというところです。

しかし、新研究棟ができるまで最短でもあと4年はかかります。その間は、現在の研究棟の使用可能な3階部分だけでなんとか研究業務をこなさなければなりません。震災直後から共同利用研究も再開しており、東北マリンサイエンス拠点形成事業など、地震と津波が沿岸の海洋生態系や海洋環境、生物資源に及ぼした影響、およびその後の生態系や海洋環境の変化についての研究も、昨年11月に竣工した「弥生」をはじめとする4隻の研究船を駆使して活発に行われています。沿岸センターでは昨年度末までに3階部分の改修工事を行いました。観測機材やトラック等を収納する大型倉庫も設置しました。スペースが限られるため設置可能な研究施設や機器はどうしても限られますが、新研究棟建設までの間の共同利用とセンタースタッフの研究に必要な最低限の研究環境を今後整えていこうと考えています。

最後になりましたが、本郷の農学生命科学研究科に異動された大竹二雄教授に代わり、私、河村知彦が4月よりセンター長を仰せつかりました。また、大竹教授の後任として青山潤さんを沿岸保全分野の教授としてお迎えしました。3月に技術専門職員を定年退職となられた黒澤正隆さんを特任専門職員として、また、鈴木貴悟さんを技術職員として、岩間信彦さんを学術支援職員として新たにお迎えしました。技術専門職員の平野昌明さんとあわせて船舶職員は4人体制となりました。新たな体制のもとセンター職員一丸となって、共同利用共同研究を推進するとともに、新しいセンターを大槌の地に再建し、沿岸域の生態研究、環境研究の国際的拠点を形成したいと考えます。また、これまで以上に地域の皆様に愛される、地域に密着した研究所として生まれ変わるべく努力いたします。大槌町のみならず東北沿岸地域の復興と発展に貢献していきたいと考えています。今後とも、皆様のご支援、ご協力を賜りますようお願いいたします。

ようやく盛土工事が始まった大槌町町方地区

改修、整備された研究棟3階の実験室(分析実験室)