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大槌レポート[7] 毎年恒例の海洋環境臨海実習

2013年9月20日

福田 秀樹(附属国際沿岸海洋研究センター沿岸保全分野 助教)

毎年5月に大槌町の国際沿岸海洋研究センター(以降沿岸センター)を中心に行われている新領域創成科学研究科の「海洋環境臨海実習」が本年も2013年5月20~24日の5日間で行われた。津波により施設が壊滅的な被害を受けた2011年も、沿岸センター現地職員による急ピッチの復旧と、岩手県水産技術センター(以降水技センター)の御厚意により実習を受け入れていただいたことで10月には開講にこぎつけ、2012年以降は以前と同様、5月に開講している。

本年は 初日の午後に沿岸センターにて開講式が行われたほか、安全教育と避難経路の確認を兼ねて、震災当日と以後の復興の様子を紹介しながら付近の避難場所までを徒歩で往復した。翌2日間は水技センターによる実習が行われた。乗船定員の関係から実習生は2班に分かれ、一方は水技センターの業務として行われた調査船「岩手丸」による表層トロールを用いたサケ稚魚の分布調査を見学、残るもう一方の班は岩手県のサケ漁業に関する講義を受けると共にサケ稚魚の形態計測と耳石の摘出作業を行うという形をとり、2日間で乗船実習と陸上実習の両方を受講できる構成とした。午後には岩手県の水産業の現状に関する講義が行われたほか、沿岸センターの屋上にて新領域創成科学研究科の斎藤馨教授による大槌湾のライブモニタリングに関する講義も行われた。半日沖合で船に揺られ、中身の濃い2日間を過ごした学生諸氏も、夜には宿泊場所となった大槌町役場浪板交流促進センターにて斎藤教授の差し入れの三陸の海の幸を楽しんだ。4日目は沿岸センターの調査船「グランメーユ」に乗船し、大槌湾でのCTD観測と溶存酸素濃度測定用のサンプルを採取した。午後には観測の結果を基に湾内の表層水の挙動を検討する物理演習と、溶存酸素濃度を測定する化学演習が行われた。最終日は化学演習の続きが行われ、各自のサンプル採取の腕前の比較が行われた。実習を手伝ってくれた柏キャンパスの技術職員が学生達とは別格ともいえる好成績を収めてくれたため、学生諸氏には採水の際の手順を丁寧に守ることの大切さを実感してもらえたと思う。最後に大竹二雄沿岸センター長による講評と閉講式が行われ、現地にて解散となった。

震災前には20名前後の学生を受け入れてきた本実習も、水技センター調査船の定員や宿泊施設の確保といった制約から現在は10名を上限とする募集となったほか、参加費用の増加やカリキュラムの改変など、実習を取り巻く諸条件にも大きな変化があり、震災以降は参加者が大きく減少、2011年の2名は例外的としても、続く2年は共に5名となっている。5月という入学後比較的早い時期に野外調査を体験してもらうことは、新入生、特に海洋関係の教育を学部学生時代に受けていない学生諸氏にとっては大学院生生活への良き導入となるはずであり、また被災した三陸沿岸の地域の復興の様子を感じてもらうよい機会でもあるように思う。この記事で本実習に興味を持っていただければ幸いである。

サンプル

水技センターでのサケの稚魚の計測

サンプル

調査船「グランメーユ」による大槌湾調査

Ocean Breeze 第13号(2013夏)、大槌リポート[7]より転載