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ひょうたん島新灯台のデザイン案と新船「赤浜」

2011年12月15日

佐伯 かおる(広報室 特任専門職員)

震災により倒壊した蓬莱島(ひょうたん島)の大槌港灯台を再建するため、釜石海上保安部が募集していた新灯台のデザインに、266の応募作品の中から、沿岸センターの岩間みな子臨時用務員の案(図1)が採用されたという昨秋のニュースをご存じの方もいると思います。2011年11月2日に大槌町役場で採用通知書の交付が行われ、早くも2012年度内の完成を目指しています。

大槌町の城山中央公民館の一室にある沿岸センター復興準備室(図2)で、12月5日、岩間さんに話を聞きました。地震と津波の後、電気が途絶えて明かりがつかなくなった中、綺麗なろうそくのコレクションが趣味だった岩間さんは、そのろうそくを近所の人たちに配って使ってもらったそうです。デザイン画のろうそく型のシルエットはここから着想を得ています。さまざまな思いが込められた新灯台が、名実ともに大槌の復興のシンボルとなることを願っています。

また、この日の夕方には、大槌漁港で新調査船「赤浜」の進水が行われました(図3)。船体は大槌町の漁師・小豆嶋勇吉氏から提供いただいたもので、津波による破損箇所を修理し、「東京大学基金 沿岸センター活動支援プロジェクト(大気海洋研究所)」の支援で購入したエンジンを備え付けています。船名の「赤浜」は、沿岸センターが立地する大槌町赤浜地区からとりました。沿岸センターの黒沢正隆技術専門職員によると、すでに8月に進水した調査船「グランメーユ」より小ぶりな「赤浜」は、磯場での標本採集作業などに使用されることになっており、小回りがきいて、大槌湾の地形に適したタイプの船です。

沿岸センターの建物は、3階には暖房も入りすでに事務室として使用されているものの、1・2階は窓ガラスも破れたまま、トイレもまだ仮設です。岩間さんがたまたま震災の1週間前に宿泊施設内部を撮影したという動画を見せてもらいましたが、今はその面影はありません。また、大槌のかつての市街地は瓦礫こそ片付いたものの、日が暮れてくると、まだ街灯や住宅等の再建が進んでいないため明かりがなく、町全体が真っ暗になってしまいます。この後12月13日に大槌町が復興計画最終案を示し、また町内の大型ショッピングセンターが営業を再開するなど、一歩一歩復興へ向かっているものの、今なお傷跡の深さを感じさせられました。

図1 灯台デザイン案。シルエットは震災で亡くなられた人への祈りを込めたろうそく、炎は未来を明るく照らす太陽、本体は「時がたてば必ず復興できる」という意志を込めた砂時計をイメージしたもの

図2 復興準備室。高台にあって津波をまぬかれた城山公民館内の一室。震災前は大槌町の考古学的資料が展示されていました

図3 新調査船「赤浜」。◎船質:FRP ◎総トン数:1.21 トン ◎船舶の長さ、幅、深さ:5.75mx1.55mx0.62m ◎定員:5 名 ◎船外機(エンジン):30kw馬力(スズキ製4ストローク)

Ocean Breeze 第7号(2012冬)、大槌レポート[3]より転載