1．生命史のダイナミクス

　海に起源した生命の進化の過程を主に分子生物学的手法により明らかにする．微生物に始まり，藻類，無脊椎・脊椎動物の歴史を遡り，現在の種と集団の成立過程を理解する．また生物多様性の変化過程と維持機構を明らかにし，将来の海洋における生命系の変化を予測する．

2．機能系のダイナミクス

　高塩分，高圧，低温など種々の海洋環境に適応するため，海洋の生命は様々な生理・生態・分子機構を獲得しなければならなかった．現世の海洋生物の適応機構と個体数の爆発的増加と崩壊を制御している分子・生理機構について研究を進める．さらには過去の地球史において重要な海洋環境形成の役割を果たしてきたバイオミネラリゼーションにも焦点をあて，研究を展開する．

3．連鎖系のダイナミクス

　海洋は無数の連鎖系から成り立っている．異なる生物の相互認識に基づく連鎖系，食物網としての連鎖系，さらには沿岸と外洋，表層と低層などの隣接する生態系の間にも物質とエネルギーの流れを介した連鎖系がある．研究船による詳細なフィールドワークと最新の生物粒子計測システム，分子生物学的手法，安定同位体の手法を用い，微生物ループとエネルギーフローを中心に，複雑に絡み合った海洋生物のネットワークと異なる生態系の間の相互作用を解明していく．

4．変動系のダイナミクス

　再生産・分散・成長・回遊など海洋生物資源の個体数変動に関わる要因を緻密なフィールドワークと最新の電子技術を駆使して明らかにし，個体数変動メカニズムを解明する．また，海洋における汚染物質の生物濃縮過程とダイナミクスについても生態調査と最新の分析技術を併用して解明にあたる．さらには地球環境変動と人類が海洋生命系へあたえるインパクトを組み入れた海洋生態系ダイナミクスモデルを構築し，海洋生命系の変動予測を行う．