キクイガイ科の一種Xylophaga sp.
基本データ
採集海域:北海道奥尻島沖
採集水深:1,878m
採集航海:なつしま NT08-09_leg2
採集日:2008年5月18日
標本収蔵機関:JAMSTEC
標本番号:076037
深海にも木を食べる生き物がいるのをご存知ですか? それはキクイガイ科の二枚貝類です.キクイガイ類は海底に沈んだ木 (沈木) に穴を堀り,その時にでる削りかすを食べ,栄養としています.まさに深海の「シロアリ」のような存在で,栄養の乏しい深海に陸上起源の栄養を循環させている重要な生き物です.
詳細データ
キクイガイは漢字で「木喰貝」と表すように,木を食べる二枚貝です.木を食べる二枚貝には,この他にフナクイムシの仲間があります.フナクイムシ類が浅海で暮らすいっぽう,キクイガイは深海で暮らしています.キクイガイ類は採集が難しく,さらには分類が難しいため,多くの種類にはまだ名前が付いていません.
二枚貝をはじめ軟体動物の殻は,体を保護しています.しかし,キクイガイ類の殻は,木を削るための道具となっています.そのため,殻の前側には非常に細かいヤスリのような彫刻があり,特殊な方法で殻を開閉しながら木を削り,削りかすを食べます.効率的に木を削るよう,足は円盤状になっていて,木に吸着することができます.
では,どのようにして木を消化しているのでしょう? 残念ながら詳しくは判っていません.キクイガイ類は鰓に共生細菌を持っているので,その細菌が分泌した分解酵素を用いて,木屑を分解,消化していると言われています.


キクイガイと同じように木を掘るフナクイムシ(二枚貝)の殻の彫刻の電子顕微鏡写真.このヤスリを使用して木を掘る(写真提供 芳賀拓真).
CT像の見所
1.効率的に木を削るための彫刻と円盤状の足 [かたちモード]
2.特殊な殻の開閉運動をするために発達した,殻の内側の突起 [レントゲンモード・スライスモード]
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