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生物資源再生分野の新設

2012年8月27日

河村知彦(国際沿岸海洋研究センター・教授)

2012年4月、大気海洋研究所附属国際沿岸海洋研究センター(以下、沿岸センター)に新たな研究室「生物資源再生分野」が設置されました。

2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震とそれに伴う大津波は、三陸・常磐沿岸地域の人間社会のみならず、沿岸の海洋生態系、特に海底の生態系や生物群集に対して大きな撹乱をもたらしました。地震や津波によって海洋生態系がどのような影響を受け、それが今後どのように変化していくのかを明らかにすることは、崩壊した沿岸漁業を復興するために不可欠な過程です。これは同時に、私たち現代人が初めて目にする大規模な撹乱現象に対して、海洋生態系がどのように応答し回復していくかを解明する科学的に重要な課題でもあります。そのための調査、研究を実行することは我々日本の海洋研究者に課せられた責務です。

被災地の岩手県大槌町にある沿岸センターは、これまで長年にわたって大槌湾を中心とする東北沿岸域で海洋に関する様々な研究活動を行ってきました。また、全国共同利用・共同研究を推進し、東北沿岸を研究フィールドとする研究者間のネットワークも構築してきました。沿岸センターは今回の津波で壊滅的な被害を受け、現在再建にむけての努力が行われている最中ですが、これまでの研究蓄積や研究者間のネットワークを基礎に、地震と津波が海洋生態系に及ぼした影響を解明し、漁業復興の基礎を築くための研究をリードすべき使命を負っています。東京大学では、その活動を支援するため、総長のリーダーシップの下に研究の核となるべき新たな研究室「生物資源再生分野」を設置したのです。

生物資源再生分野では今後10年間にわたって、大地震と大津波が沿岸の海洋生態系や生物資源に及ぼした影響、および攪乱を受けた生態系の二次遷移過程とそのメカニズムを解明します。また、その基礎となる生態系の構造や機能、各種生物の生態について精力的な研究を展開していきます。国際的海洋生態研究の拠点を形成することにより、東北沿岸地域の復興と発展に貢献したいと考えています。

「生物資源再生分野」立ち上げ時のメンバー。写真左から、中村慎太郎(D2)、伯耆匠二(D1)、河村知彦(教授)、福田介人(技術補佐員)、大土直哉(D2)。2012年6月28日の潜水調査後、大槌漁港にて。

Ocean Breeze 第9号(2012夏)、大槌レポート[5]より転載