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国際沿岸海洋研究センターシンポジウム「三陸沿岸生態系に対する大津波の影響と 回復過程に関する研究報告会」

2012年5月30日

福田 秀樹(国際沿岸海洋研究センター 助教)

2011年12月17日、当研究所の国際沿岸海洋研究センター(以下、沿岸センター)が立地する岩手県上閉伊郡大槌町の中央公民館にて沿岸センターと町の共同により「三陸沿岸生態系に対する大津波の影響と回復過程に関する研究報告会」と題されたシンポジウムが開催されました。3月11日に本州東岸を襲った大津波より9か月余りが過ぎ、三陸沿岸部で各研究機関により行われている調査研究の経過を広く一般の方々に知っていただくために企画されたものです。

岩手県沿岸部の中央付近に位置する大槌湾の生態系は、2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う地盤沈下と大津波の襲来により大きな被害をうけました。鵜住居川河口部での砂州の消失を初めとする海岸線の変化、港湾施設や防潮堤の破壊、そしてあの日陸上から海中へ引き込まれていった大量の瓦礫など、地域の人々が目にし、触れることができる破壊の傷跡は、漁業を地域の中心的な産業とする大槌町の人々に大きな不安を与えているのではないかと思われます。これらの破壊が沿岸生態系にもたらした被害の実態と被害からの回復状況に関する情報は、地域の方々に強く求められていると思われますが、各研究機関により行われている調査の内容が論文や報告書として公表されるまでに要される時間は、地域の方々にとっては長すぎます。そこで沿岸センターは「2011年度日本海洋学会青い海助成事業震災対応特別枠」という助成制度を利用し、大槌湾や三陸沿岸部で進行している調査研究の経過を地域の方々に広く知っていただくためのシンポジウムを企画しました。本シンポジウムの開催に先立ち、広報用のポスターを作成しましたが、大槌町役場が協力して下さり、町内各地の仮設住宅団地の掲示板に掲示していただいたほか、岩手県も岩手県庁のHP内で告知を行って下さいました。

当日は大槌町の高橋浩進副町長に開会のあいさつをしていただいたほか、釜石湾の湾口防波堤の破壊により湾内の循環過程が受けた影響や、大槌湾での栄養塩類の分布状況など、物理・化学的な環境に関する話題から、アワビや魚類などの水産資源や海藻群落やアマモ場の現在の状況などの生物的な話題など、11の話題を6機関に所属する研究者の方々に提供していただきました。シンポジウムには青森・岩手・宮城の行政・研究関係の方々の多数の来場があったほか、上記3県以外からも大学関係者や大槌湾に隣接する大槌町、釜石市をはじめ、盛岡市や北上市など、県内各地にお住まいの一般の方の来場もありました。質疑応答や総合討論の場では行政・研究関係者により活発な意見交換が行われたほか、今後も地域の方々に向けた情報発信を継続していくことの重要性も確認されました。本研究集会の講演内容の一部を以下のURLで紹介していますのでご覧ください。
URL http://www.aori.u-tokyo.ac.jp/aori_news/meeting/2011/20111217.html

開会のあいさつをしていただいた高橋浩進大槌町副町長

シンポジウムが開かれた大槌町中央公民館

シンポジウム会場のようす

Ocean Breeze 第8号(2012春)、大槌リポート[4]より転載