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ナンキョクオットセイの餌捕りの意思決定

2015年7月22日

岩田高志(東京大学大気海洋研究所 海洋生命科学部門)
坂本健太郎(北海道大学大学院 獣医学研究科)
Ewan W. J. Edwards(英国南極局)
Iain J. Staniland(英国南極局)
Philip N. Trathan(英国南極局)
後藤佑介(東京大学大気海洋研究所 海洋生命科学部門)
佐藤克文(東京大学大気海洋研究所 海洋生命科学部門)
内藤靖彦(国立極地研究所)
高橋晃周(国立極地研究所)

写真:ナンキョクオットセイの親子

発表のポイント

・ナンキョクオットセイは、過去2-3潜水中の餌獲得の経験に基づいて餌捕りの意思決定を行っていたことを発見した。
・ナンキョクオットセイは、過去2-3潜水中に多くの餌を獲得した後はその場から移動せず、あまり餌獲得できなかった後は離れた場所へ移動することを示した。
・ナンキョクオットセイは、直前の潜水における経験だけでなく、採餌とは無関係な呼吸イベントを挟んだそれ以前の複数回の潜水における採餌経験も併せて高度な意思決定をしていたことが明らかとなった。

背景

動物は限られた時間内でエネルギー獲得量を最大化するために、どこでどのように餌を食べるのかといった意思決定をしなくてはならない。例えば、彼らは餌に遭遇した後、水平方向にあまり移動せずその近辺に留まることで効率良く餌探索していることが報告されている。しかしこれまでの研究は、陸上動物を対象とした研究が多く、海洋動物、特に肺呼吸性潜水動物を対象とした研究はほとんどない。海棲ほ乳類や海鳥類は、餌場のある深度に潜水するが、呼吸のために水面へ戻る必要があるため餌場にずっと留まることができない。そのため、彼らは呼吸という制限下で餌捕りの意思決定をしていることが考えられる。本研究では潜水動物の一種であるナンキョクオットセイを対象とし、動物装着型行動記録計を用いて彼らの餌捕り行動の意思決定について明らかにした。

研究成果

これまでのデータロガーを使用した研究から、ナンキョクオットセイは採餌のために外洋で連続的に潜水すると言われている(連続的な潜水の平均継続時間は約1500秒)。オットセイは連続的に潜水している間、過去どのくらいの期間の餌捕り経験を頼りにその後の行動を調整しているのだろうか。本研究では、オットセイが連続的に潜水をしている期間に注目し、過去1-1500秒間の餌捕り経験で、過去どのくらいの期間までの餌捕り経験が、その後の行動に影響を与えているのかを調べた。オットセイの下アゴに装着した加速度記録計から餌獲得イベントを抽出し、背中に装着した行動記録計から遊泳軌跡の再構築をした。その結果、オットセイの連続的な潜水において、潜水底部で餌探索を行った後の水平移動距離は、過去244秒間の餌獲得率に最も強く影響されていることが、統計モデルにより示された(図1)。244秒間はオットセイの2-3潜水分の時間に相当するので、彼らは直前の餌獲得経験だけでなく、2-3潜水前までの餌獲得経験に基づいて、その後の移動距離を決めていたことが示唆された。また、オットセイは過去244秒間で多くの餌を獲得したとき、その後はあまり水平方向へ移動せずその場に留まっていたことが示された(図2)。餌場で採餌を続けられる陸上動物に比べ、潜水動物は呼吸のために餌場を離れなくてはならないため、採餌行動が断続的となる。つまり過去複数回の潜水中の採餌経験を参考にするためには、採餌とは関係無い呼吸などを挟んだ長時間の記憶が必要となる。採餌の効率を追求する潜水動物がこのような意思決定をしていることを、本研究では世界で初めて報告した。

発表雑誌

雑誌名:Biology Letters
論文タイトル:The influence of preceding dive cycles on the foraging decisions of Antarctic fur seals
著者:Takashi Iwata*, Kentaro Q. Sakamoto, Ewan W. J. Edwards, Iain J. Staniland, Philip N. Trathan, Yusuke Goto, Katsufumi Sato, Yasuhiko Naito, Akinori Takahashi
(*連絡先:tiwataaori.u-tokyo.ac.jp)    メールアドレスの「◎」は「@」に変換して下さい。
DOI:10.1098/rsbl.2015.0227
アブストラクトURL:http://rsbl.royalsocietypublishing.org/content/11/7/20150227

図版

写真 ナンキョクオットセイの親子

図1 過去1500秒間までの餌捕り経験において、どのくらい過去までの餌捕り経験が、その後の行動に影響を与えているのか。AIC値が低い時間が、その後の行動により影響を与える。過去244秒間が最も低いAIC値となった。

図2 過去244秒間の餌捕り率とその後の水平移動距離の関係。餌捕り率が高いときはあまり移動せず、低いときは離れた場所へ移動していた。

研究トピックス