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水深7千7百m深海魚の撮影に成功

2008年11月

日本財団「新世紀を拓く深海科学リーダーシッププログラム」(HADEEP)

図1.日本海溝の水深7703メートルの深海で、エサに群がる魚

図1:日本海溝の水深7703メートルの深海で、エサに群がる魚

日本海溝深部の極限環境に生息する魚類の生態を映像に捕らえました。

HADEEP研究グループでは、この度、北西太平洋、房総・茨城沖の日本海溝の水深7703mにおいて、ランダーと呼ばれる海底設置型超深海調査機器を使用し、これまでこのような超深海では生息しないと考えられていた大量の魚の映像を撮影することに成功した。

Psedoliparis amblystomopsis Andriashev, 1955 (今回撮影された魚は日本海溝での記録の為、Notoriparis sp. af. N.amblystomopsis (Andriashev, 1955)とする研究者もいる)、和名シンカイクサウオ*注という魚で(図1)、これまでのトロールによる採集記録では20cm程度が最大と思われてきた。


注: この調査で撮影された魚は、当初、映像からシンカイクサウオ (Pseudoliparis amblystomopsis)と仮同定されたが、この時に採取された 標本を後に佐藤 崇研究員(現・国立科学博物館研究員)が査定したところ、 胸鰭に欠刻がなく、シンカイクサウオではなくチヒロクサウオ(Pseudoliparis belyaevi)であることがほぼ明らかになりました。(2013.11.28)


今回の調査で、同時に17匹の非常に活発な活動を示す魚を撮影できたことは、これまでの深海生物学を覆す発見になる。現在世界で、6000mを超える超深海でこのような生態映像を撮影したシステムは、当HADEEPプログラムの機器のほかにない。

 HADEEPプロジェクトは2006年度からスタートした日本財団助成事業「新世紀を拓く深海科学リーダーシッププログラム」で、通称をHADEEP(Hadal Environmental Science / Education Program)という東京大学海洋研究所所長(西田睦)をリーダーとするプロジェクトで、今年で三年目になる。研究プログラムとして、超深海(6000m以深~11000m)をターゲットとした英国スコットランド・アバディーン大学との日英共同の研究が行われている。2008年度の学術研究船白鳳丸KH08-3 Leg.1研究航海(2008年9月24日(水)~10月6日(月))にて、HADEEP研究航海が行われ、海洋研究所からは乗船研究代表者としてリサーチマネージャー(松本亜沙子)が乗船し、調査を執り行った。

 世界の海溝のほとんどは、太平洋に集中しており、とりわけ日本周辺には、日本海溝・伊豆小笠原海溝・千島海溝・南海トラフ・琉球海溝など複数の海溝が集中しており、その全てが日本の領海に含まれる。HADEEPプロジェクトはこれらの海溝の生物をターゲットとして研究を進めている。

6000m以深の超深海は、超高圧・超低温・超貧栄養という極限環境である。その為、海溝では、これまで魚の生息密度は非常に低く、また生息する魚の活動は鈍いものと考えられてきた。地球上で採集されたうち、最も深い深度での魚の記録はプエルトリコ海溝で採集されたAbyssobrotula galatheae Nielsen,1977(和名ヨミノアシロ)の8370mだが、博物館の標本以外の生きた姿を、観察されたことはない。その為、この深度で本当に魚が生息しているかどうかはこれまで確証はなかった。また、これまでの深海調査機器では、海溝底の魚の自然な生態を調査することは不可能であったため、HADEEPプロジェクトでは、英国アバディーン大学と共同で12000m級の設置型調査機器(ランダー)を製作し、調査を行った(図2、3)。ランダーは、海溝最深部に到達するまでに5時間程を要し、海底に1-2日程設置後、船上からシグナルを送り浮上後揚収する。

アバディーン大学と協同で開発した観測機器

図2,3:アバディーン大学と協同で開発した観測機器

アバディーン大学と協同で開発した観測機器


今回の調査で生態を観察されたシンカイクサウオは、餌として使用したサバに集まる無数のヨコエビ類を活発に摂食していた。





この超深海のシンカイクサウオの仲間は、これまで、6000m以深の海溝軸でのみ発見されており真の超深海層の種と考えられるが、記録はこれまでのなかでも最深のものになる。

 

詳細情報
学術研究船 白鳳丸 KH08-3次研究航海 Leg.1
期間 平成20年9月24日(水)~平成20年10月6日(月)
出港:9月24日 14時 東京(晴海)港
入港:10月6日(月)10時 塩釜 港
船舶名:学術研究船白鳳丸(海洋研究開発機構) 総トン数 3991トン
航海海域:日本南方・東方海域
調査目標:日本海溝
実記録深度:7703m
プログラムリーダー(西田睦・東京大学海洋研究所所長)
乗船研究代表者:リサーチマネージャー(松本亜沙子・東京大学海洋研究所特任研究員)

【関連リンク】
HADEEP 
英国アバディーン大学(共同研究相手) 

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