「海洋生命系のダイナミクス」プロジェクトの生命史班・「脊椎動物の系統進化」チームでは,魚類を中心とした海洋生物の進化史を,分子生物学的手法を用いて研究しています.解析に用いられる多様な生物は,さまざまな手段を使って入手され,標本となって分子分析に供されます.これにより,多様な生物の進化の道筋の探求が可能となります.今回は,こうした研究活動の流れの一端をご紹介しましょう.

(1) 採集風景.漁船に乗せてもらってサンプリング

(2) 研究用の魚を買ってくることもあります

(3) 解析を待つ多数のサンプルたち

(4) DNAの抽出,PCR,シークエンスと作業は進みます (写真はPCRの結果を確かめる作業)

 

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我々のチームでは,ミトコンドリア (mt) ゲノムの全塩基配列分析に基づいて,「魚類全体」の系統構造を明らかにすることを目標のひとつとしています.すでに主要な分類群を網羅する100種以上についてmt ゲノムの全塩基配列を決定しており,いくつかの興味深い結果を得ています.左図は,その一例です.真骨魚類の4つの主要分類群 (オステオグロッサム類,カライワシ類,ニシン類,正真骨類) の系統関係については,これまで形態学的データに基づき様々な説が出されていましたが,mt ゲノム情報に基づいた我々の研究 (Inoue et al., 2001) により,左図のような統計的に信頼性の高い系統樹が得られました.

(5) 得られた結果は,解析して論文になります.これは真骨魚類の初期進化を明らかにしたもので,魚類のミトコンドリアDNAの全塩基配列を決定していくことで信頼性の高い系統樹を推定することができます

11 May, 2001