アブラキヌタレガイSolemya(Petrasma)pervernicosa

  • アブラキヌタレガイ背
  • アブラキヌタレガイ横
  • アブラキヌタレガイ腹

基本データ

採集海域:鹿児島県野間岬沖,鯨遺骸域周辺

採集水深:227m

標本サイズ:殻長54mm


二枚貝の仲間.キヌタレガイの仲間は,オルドビス紀(およそ4億9000万年前)に地球上に出現して以来,姿をほとんど変えていない「生きた化石」である.鰓に共生させているイオウ酸化細菌が硫化水素からつくるエネルギーに依存して生きる,いわゆる化学合成二枚貝である.

詳細データ

貝殻は非常に薄く,もろい.貝殻は,褐色の分厚い「殻皮」と呼ばれる有機物の組織で覆われている.この殻皮は,貝殻を大きくはみ出すように発達するが,生きているうちは貝殻の内側に折り返されている.しかし,死後この折り返しは解消されてしまい,この様子があたかも衣(きぬ)が垂れている(たれている)ように見えることから,キヌタレガイという名前がつけられた.欧米では,この様子をお店の「日よけ」に例えて,awning clam(日よけ二枚貝) という通称がある.

この標本は人為的に沈設された鯨の遺骸付近から採集された.鯨の遺骸の腐敗によって生成されたメタンや硫化水をエネルギー源にして,鰓内の化学合成細菌(イオウ酸化細菌)が有機物を生成しているのだろう.このような鯨骨に依存する化学合成群集を鯨骨群集と呼ぶ.化学合成群集を構成する種は,浅海の通常の環境から深海のメタン湧水や熱水噴出域などの特殊環境に進化する足がかりとして,鯨骨を利用していたとする進化的ステップストーン説が有名である..

CT像の見所

1.二枚の貝殻から飛び出ている「足」.これをアンカーのように使って海底を掘り進む.

2.二枚の殻の間で癒合した「外套膜」,大きく貝殻からははみ出た「殻皮」.

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