沈木海底に沈んだ木

  • 沈木横
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基本データ

採集場所:高知県清水漁港

採集水深:不明


陸から海に流れ,海底に沈んだ木を沈木という.本標本は漁港に落ちていた標本である.おそらく底引き網漁などで偶然ひっかかった沈木を漁港に捨てた物と思われる.

この沈木には無数に穴が開いており,その穴は石灰質の薄い殻状の管がコーティングされている.これはフナクイムシ科に属する二枚貝がヤスリのような殻で木に穴を開け,石灰質のコーティングを施した物である.フナクイムシという名前の通り,木造船などに穴をあけることが知られている.木造船はしばしばフナクイムシに穴をあけられ,ときに沈没の危機に瀕していた.

詳細データ

木に穴をあける二枚貝には,大きく分けて2グループいる.このフナクイムシとである.漢字で書くと,船喰虫と木喰貝.どちらもなんだか恐ろしいですね.フナクイムシは,沈木に穿孔し,石灰質の棲管をつくる.キクイガイはつくらない.ご丁寧なことに,棲管の末端はきちんと塞いでいる.ぜひCT像をあやつって一つの管を追って見て欲しい.

ところで,沈木は深海底で新たな生態系を作っている.メタン湧水や熱水噴出孔に生息するイオウ酸化細菌などを共生した化学合成生物(シロウリガイなど)が沈木の周囲にできた還元環境にも生息する.このような沈木に依存した底生生物群集を沈木群集という.実はその成立にフナクイムシやキクイガイが一役買っているという説がある.普通,木はセルロースなどの普通の生物には分解しにくい有機物でつくられている.フナクイムシやキクイガイは,体内にセルロースを分解する共生細菌を持っており,その細菌の働きによって木から栄養を摂っている.そして,フナクイムシなどの糞は沈木の周囲へと巻散らかされる.いつの間にか,その糞は膨大になり,それが還元環境を生み出すというのだ.深海にはなんとも不思議な生態系があるものだ.

CT像の見所

無数の穴!穴!穴! よく探すとフナクイムシ本体の殻を見つけられる.

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