東京大学 大気海洋研究所50年史 1992-2001 東京大学 大気海洋研究所50年史 1992-2001

第4章 大気海洋研究所の組織と活動

4-1 共同利用と国内外共同研究の展開

4-1-1 共同利用研究所から共同利用・共同研究拠点へ

海洋研究所も気候システム研究センターもその発足当初より,全国共同利用研究施設として活動してきた.すなわち,前者は淡青丸と白鳳丸を建造し,共同利用航海を推進・運営することを軸に,また後者は気候システム研究におけるスーパーコンピュータの共同利用を推進・運営することを軸に,活動を進めてきた.国立大学の法人化以前は,全国共同利用研究所・センターは国立学校設置法のもとで法令によって設置されていた.そして,全国共同利用に必要な経費は国立学校特別会計により,通常の大学運営経費とは別に措置されていた.

ところが,2004年4月に国立大学が法人化されると,こうした全国共同利用施設の法令上の位置づけがなくなってしまった.また,大学への経費はすべて運営費交付金として個々の大学へ配分され,大学ごとに執行されるため,大学の枠を超えて全国の研究者の意思で運営する全国共同利用のシステムは,新たに法人化した国立大学の制度と齟齬を生じることになった.そこで,こうした齟齬を解消するため,学校教育法施行規則を改め,「全国共同利用」システムから,「共同利用・共同研究拠点」システムへの転換がなされることになった.その際,文部科学省では,これを公私立大学にも拡大すること,一学問分野について拠点は1つという原則を改め,分野の特性に応じて複数の拠点を設置することも可能にすること,複数の研究所から構成されるネットワーク型の拠点形成も可能にすること,などを決定した.文部科学大臣の認可を受けると,その拠点は国立大学法人2期目(2010年4月~2016年3月)の中期目標・中期計画に記載され,法的根拠を有する.

2008年7月に文部科学大臣の認可を受けるための募集が開始された.拠点には,全国の研究者コミュニティの強いサポートがあること,拠点の長の諮問にこたえる運営委員会のメンバーの半数以上は学外者であること,などが求められた.海洋研究所と気候システム研究センターでは,ちょうど2010年4月からの統合を決めたところだったので,本学本部や文部科学省と相談して,西田睦所長と中島映至センター長の連名で,発足予定の大気海洋研究所が支える「大気海洋研究拠点」を申請した.これには,これまで行ってきた全国共同利用の内容を基礎に,それに加えて共同研究の側面も強化することも考え,「学際連携研究」という枠組みも新たに設定し[➡4―1―3(3)],より充実した共同利用・共同研究活動を提案した.日本海洋学会,日本水産学会,日本気象学会をはじめ,多くの関連学会からサポートレターが寄せられた.こうした研究コミュニティの支持と,両組織のこれまでの実績を背景に,申請した拠点は問題なく認可された.なお,このときには合計106件(国立大学96件,私立大学10件)の申請があり,73件(国立大学70件,私立大学3件)が共同利用・共同研究拠点として認定を受けた[➡資料1―8―4].

以上のような経過を経て,共同利用を引き継ぐ共同利用・共同研究拠点である「大気海洋研究拠点」は,2010年4月に大気海洋研究所の設立と同時に発足した.それぞれの関連研究者が拠点活動を支えるとともに,本所では,新たに共同利用共同研究推進センターを設け,主として技術面・設備面から共同利用・共同研究の推進を支える態勢が強化された[➡3―2―5].また,学術研究船の運営については,共同利用共同研究推進センター内に種々の企画調整を行う研究航海企画センターが置かれた.