東京大学 大気海洋研究所50年史 1992-2001 東京大学 大気海洋研究所50年史 1992-2001

第3章 大気海洋研究所の設立への歩み

3-2 研究組織の改組

3-2-3 海洋科学国際共同研究センターの改組

2010年4月の本所の発足に伴い,海洋科学国際共同研究センターは改組され,新たに設立された国際連携研究センターにその役割を引き継ぐこととなった.

国際連携研究センターは,国際的な政府間の取り決めによる海洋や気候に関する学術活動を担当する国際企画分野,国際的枠組みで行う大気海洋科学に関わる統合的国際先端プロジェクト創成・推進を担当する国際学術分野,国際科学水準をさらに高めるためアジア諸国を始め世界各国との連携を通して学術交流や若手人材育成の基盤を形成する国際協力分野の3分野で構成され[➡0―4―3(2)表],教授3名および大気海洋研究所の3つの研究系からの兼務准教授3名がその任に当たっている.

国際企画分野の道田豊教授は2011年7月,日本から40年ぶりに政府間海洋学委員会(IOC)副議長として選出された.また,国際学術分野の植松光夫教授は2011年12月より日本ユネスコ国内委員会委員と同自然科学小委員会IOC分科会委員長として活動中である.これまでも日本はIOCの執行理事会や総会に対し,文部科学省の対応部局である国際統括官(ユネスコ担当)やそれを支える海洋地球課が世話役となってIOC国内分科会を担当し,海洋研究所所長が分科会委員長となり,本センター教員の支援のもと活動を行ってきた.各省庁を横断するIOC活動をとりまとめるためにも,また政府担当者が頻繁に替わるなかで海洋に関する施策や国際的な場での交渉調整等に長期的な視野で判断を下すためにも,本センターの教員の果たしている役割は大きい.

植松教授が主導した国際科学会議(ICSU)下の地球圏-生物圏国際協同研究計画(IGBP)コアプロジェクトである海洋・大気間の物質相互作用研究計画(SOLAS)に関する特定領域研究は2010年度で終了した.また,国際協力分野の西田周平教授が率いた日本学術振興会の多国間拠点大学交流事業「沿岸海洋学」も2010年度に最終年度を迎え,2011年には最終シンポジウムを開催したほか,『Coastal Marine Science』の特集号や英文単行本を出版し,その事後評価結果では極めて高い評価を受けた.本事業を通して日本を含む6カ国で築き上げた350名もの研究者ネットワークの維持,強化,拡大は今後の重要課題であり,本センターに対しては日本国内関係研究者だけではなく,東南アジア諸国からも大きな期待が寄せられている.植松教授は2011年にICSUからの指名により,IGBP科学委員会委員に就任している.西田教授は2011年にAsian Core Programを立ち上げ,インドネシア,マレーシア,フィリピン,タイ,ベトナムとの沿岸海洋学の発展と継続に尽力している.

朴進午准教授(兼務)は,統合国際深海掘削計画(IODP)の国際的プロジェクト推進に,井上広滋准教授(兼務)は,東南アジア諸国との海洋環境と生物に関する共同研究活動,今須良一准教授(兼務)は,気候変動に関する国際共同研究活動に従事している.