東京大学 大気海洋研究所50年史 1992-2001 東京大学 大気海洋研究所50年史 1992-2001

第3章 大気海洋研究所の設立への歩み

3-1 大気海洋研究所の設立

3-1-5 設立

ほとんどの大学でそうであるように,本学でも部局(研究科や研究所)の長や内部規則などは,部局の教授会が決定することになっている.しかし,その教授会は部局の長が招集し,また管理運営上の諸々も部局の長が指揮・命令することになっている.したがって,新研究所を立ち上げる際,当初から所長が存在する必要がある.本学での比較的最近の類似事例である情報学環設立の際の手続きなどを参考に,最初の所長および諸規則を決めるため,2010年1月に総長の管理下に「東京大学大気海洋研究所設立準備委員会」が設置された.構成メンバーは,それぞれの執行部の教員を中心に,海洋研究所教授会および気候システム研究センター教員会議で選出された.設立準備委員会は,1月から3月に3回の会合を開き,両組織および「海洋研究所・気候システム研究センター連携準備委員会」で検討を進めてきた新研究所の理念を整理した文書「大気海洋研究所の基本理念・基本目標・組織の基本構想」を確認した[➡0―4―2].また,上記のような検討過程を経て提案された大気海洋研究所の諸規則案を審議し決定した.所長については,西田睦海洋研究所長を海洋研究所での当初の任期末までに当たる1年間(2010年4月~2011年3月)に限り大気海洋研究所の所長候補者とすることについて,海洋研究所教授会および気候システム研究センター運営委員会においてそれぞれ承認された.その結果に基づき,同設立準備委員会は審議の結果これを了承し,大気海洋研究所の初代所長に西田睦教授が就任することになった.

以上のような経過を経て,2010年4月1日,大気海洋研究所が正式に発足した.同日,柏キャンパスの大気海洋研究棟の会議室において,大気海洋研究所第1回教授会が総勢50名を超えるメンバーの出席で開催され,新研究所はその活動を開始した.

今後,本所は,研究,教育,共同利用・共同研究,アウトリーチ,国際貢献などの面で,より活発な活動を展開することに精力を注ぐことになる.ここで,本所の足元に残された課題をひとつ挙げるとするならば,それはスペースの問題である.本所設立のタイミングが,海洋研究所の柏移転作業開始よりも少し後になったため,現在は海洋系メンバーの居室・実験室と気候系メンバーのそれとが,柏キャンパスの東西に離れて存在せざるを得ないことになった.柏キャンパスはまだ形成途上である.したがって,いずれそう遠くない将来に,全所のメンバーが同じスペースでより緊密に連携・共同して研究教育活動ができるようにすることは十分に可能であろう.その実現が今後の課題として本所に残されている.