東京大学 大気海洋研究所50年史 1992-2001 東京大学 大気海洋研究所50年史 1992-2001

序章 発足からの50年間をふりかえって

0-5 おわりに

大気海洋研究所の50年間の小史をまとめて感じるのは,ここ20年はまさに激動の時代であったことである.しかも,国立大学の法人化,学術研究船の移管,海洋研究所と気候システム研究センターの統合による大気海洋研究所の発足,国際沿岸海洋研究センターの被災など,最近になればなるほど様々なできごとが加速度的に起こっているように思える.

海洋研究所と気候システム研究センターが統合して発足した大気海洋研究所は,いまだ歴史が浅く,いわば新酒の状態である.新酒独特の香りをはなっていても,それだけでいつまでも評価されるわけではない.本所は現在,120名の教職員,130名の博士研究員とサポーティングスタッフ,200名の大学院学生を擁しているが,これらメンバーが力を合わせ足腰を鍛えて,これからも起こるであろう様々な擾乱にびくともしない研究所へと成長していく必要がある.2年前までは海洋研究所と気候システム研究センターは別組織として,それぞれ独自の価値観や研究手法を用いて研究教育活動を行ってきた.カルチャーの違いは様々なできごとに対するとらえ方の相違を生むかもしれないが,それがお互いに良い教訓となり,将来の発展の基盤になると期待される.若い世代の研究者は新研究所が生み出すカルチャーを持って活躍してくれるに違いない.彼らは大気・海洋・生命科学を統合した新しい大気海洋科学の創成という重要な課題にチャレンジして,研究所としての熟成化に貢献してくれるであろう.本所は将来にも目を向けており,2012年2月には研究集会「大気海洋学の夢ロードマップ―2050年の未来にむけて」(共同利用提案者:川幡穂高,中島映至,木暮一啓)を開催し,7名の本所教員がそれぞれの専門領域の面からの夢を自由に語った.2013年度には新研究所としての第1回外部評価が予定されている.われわれは長期展望と短期的な現実対応をバランスさせた実現可能で具体的なロードマップを考えていかなければならない.