東京大学 大気海洋研究所50年史 1992-2001 東京大学 大気海洋研究所50年史 1992-2001

序章 発足からの50年間をふりかえって

0-4 大気海洋研究所の小史

0-4-2 大気海洋研究所の基本理念・基本目標・組織の基本構想

大気海洋研究所発足に先立ち,海洋研究所と気候システム研究センターは2009年12月に「大気海洋研究所の基本理念・基本目標・組織の基本構想」をまとめた.現在まで,この構想に沿って本所の活動が行われている.この構想の主要な部分を記す.

大気海洋研究所の基本理念:大気海洋研究所は,地球表層の環境,気候変動,生命の進化に重要な役割を有する海洋と大気の基礎的研究を推進するとともに,先端的なフィールド観測と実験的検証,地球表層システムの数値モデリング,生命圏変動解析などを通して,人類と生命圏の存続にとって重要な課題の解決につながる研究を展開する.また,世界の大気海洋科学を先導する拠点として,国内外における共同利用・共同研究を強力に推し進める.これらの先端的研究活動を基礎に大学院教育に積極的に取り組み,次世代の大気海洋科学を担う研究者ならびに海洋・大気・気候・地球生命圏についての豊かな科学的知識を身につけた人材の育成をおこなう.

大気海洋研究所の基本目標:人類の生存基盤である地球表層の変動を総合的に理解し,顕在化しつつある地球環境問題等への対策や信頼できる将来予測のためには,国内外との連携のもと,海洋・大気・気候・生命圏の変動に関与する多様な基礎的過程を深く理解する必要がある.その知見を基礎に,地球表層圏の統合的な振る舞いを,地理的変異を考慮しつつ地球規模でかつ全地球史的な視点から解明する.研究:海洋と大気および気候に関する基礎的研究を推進する.既存専門分野の枠組みを超えた先端的なフィールド観測,実験的検証および数値モデリングの連携により,大気・海洋・生命科学を統合した新しい大気海洋科学の創成を目指す.地球表層圏が抱える人類と生命圏の存続に関わる諸問題に対して,その対応の基礎となる科学的知見を提供する.教育:大気海洋科学の次世代を担う研究者を育成する.学内外の多様な連携を通じて,地球が抱える諸問題に対応できる科学的知識を有する人材を育成する.共同利用・共同研究:大気海洋研究拠点として,学術研究船や電子計算機等の共同利用や多様な共同研究の推進を通じて,大気・海洋・気候・地球生命圏に関する研究の発展を図り,研究者コミュニティに貢献する.国際共同研究・国際貢献:政府間の取決めによる海洋や気候に関する国際機関や国際的NGOなどの活動に貢献するとともに,国際共同研究を推進し,国際的な学術交流や若手人材育成を促進する.社会貢献:研究成果を迅速かつ分かりやすく社会に発信すると共に,行政の施策のための基礎となる科学的知見を審議会,委員会,学会活動などを通じて提供する.運営:学問研究と教育の発展に不可欠な自由な発想を尊重するとともに,法令遵守や省エネルギーに配慮する.構成員や外部の声を反映しつつ,所長の適切なリーダーシップのもとに,透明で迅速な運営を行う.

大気海洋研究所の組織の基本構想:研究所の組織は,各学問分野における基礎研究を推進する3つの研究系(気候システム研究系,海洋地球システム研究系,海洋生命システム研究系)と,各学問分野の知見を用いた統合的研究や国際的研究を推進する3つの研究センター(国際沿岸海洋研究センター,国際連携研究センター,地球表層圏変動研究センター)から構成する.また,共同利用・共同研究を支援する組織として,共同利用共同研究推進センターを置く.