東京大学 大気海洋研究所50年史 1992-2001 東京大学 大気海洋研究所50年史 1992-2001

序章 発足からの50年間をふりかえって

0-2 海洋研究所50年間の小史

0-2-3 海洋研究所の発展(1992年4月~2010年3月)

本所設立当初の計画に沿って,部門(現在の分野)が年を追って整備されていった.1990年6月に16番目の海洋分子生物学部門が設置されて,本所の基礎固めは一段落した.ただし,海洋に関する基礎的研究を行う全国共同利用研究所としての機能を高めるための努力は絶え間なく続けられた.以下にこの期間の主なできごとを年代順に記す.

1994年3月,本所の将来構想委員会は『東京大学海洋研究所の現状と課題』を発行し,研究部門の充実,国際共同研究の進展のための新センターの設置が必要であると指摘した.

1994年6月,海洋科学国際共同研究センターが設置された.本所設立以来,数多くの国際共同研究に日本の海洋コミュニティを牽引する立場で参画してきたが,本来グローバルな性格を有する海洋科学に国際共同研究の核となる組織が所内に必要であり,また,日本学術振興会の拠点大学方式による研究者交流がアジアを中心に盛んになってきたことが設立の背景となった.本所は16研究部門と2研究センターの体制となった.

1995年,第1回外部評価が国内外の20名の有識者により行われ,キャンパス移転を含めて改組拡充が不可欠との指摘を受けた.

2000年3月,第2回外部評価が国内外の24名の有識者により行われた.海洋科学の先端・境界領域の研究を総合的かつ柔軟に行うために小部門を大部門に改組する計画が支持された.やはりキャンパスと建物の狭隘が指摘された.

2000年4月,大部門制に改組された.従来の16小部門(現在の分野に相当)は6大部門にまとめられた.同月,『平成12年度改組後の東京大学海洋研究所』を発行した.

2000年4月,海洋環境研究センターが,部門改組とともに,10年時限で設置された.従来の小部門の枠組みにとらわれず,海洋環境について学際的に取り組むための新たな研究センターの設置は将来構想委員会で論じられていた.同センター設置により,本所は6研究部門と3研究センターの体制となった.

2001年4月,新領域創成科学研究科海洋環境サブコースが新領域創成科学研究科(1998年4月設置の独立研究科)環境学研究系自然環境コースに設置された.本所の大学院教育は主に理学系研究科と農学生命科学研究科を通して行ってきたが,本所は海洋科学の総合化に対応する大学院教育を行うことを意図して新領域創成科学研究科に参画し,本所教員21名が同サブコースに加わった.

2003年4月,大槌臨海研究センターの改組により国際沿岸海洋研究センターが設立された.設置から30年にわたる沿岸海洋研究の全国共同利用拠点としての活動が評価され,教員数は教授1,助手4から教授2,助教授2,助手2となった.同年10月,『東京大学海洋研究所国際沿岸海洋センター(旧大槌臨海研究センター)30年の歩み(1973~2003)』を発行した.

2004年4月,国立大学が法人化された.これ以降,法人化の影響が本所の運営に様々な影響を与えた.部門などの組織の変更は,名称の変更も含めて,省令の改正を必要としなくなった.法人化を機に本学は,これまでの定員を考慮して各部局に採用可能数を設定し,これを毎年減じていくことにした.

2004年4月,海洋環境研究センターの改組により先端海洋システム研究センターが設置された.2004年度に総長裁量定員により6年の時限で4名の教員ポストが措置されたことを契機として,海洋環境研究センターは発展的に拡充された.

2004年4月,淡青丸白鳳丸が本学から海洋研究開発機構に移管された.本所および両船は,文部科学省からの移管依頼に対して,本所が両船の共同利用を責任を持って行うことなどを条件に承諾した.観測機器管理室を観測研究企画室に改組・拡充し,航海日数が年間300日に増加する移管後の学術研究船の全国共同利用を支援する体制を整えた.

2006年4月,海洋環境学コースが新領域創成科学研究科環境学研究系に設置された.同研究系の改組に伴い,自然環境コースは自然環境学専攻,海洋環境サブコースは海洋環境学コースとなり,陸域環境学コースとともに同専攻の大学院教育を行うことになった.本所教員4名は,ポストとともに同研究科の協力講座教員から基幹講座教員に転換され,本所の兼務教員となった.

2008年3月,第3回外部評価が国内外の24名の有識者により行われた.本所の活動は高い評価を得つつも,グローバルな気候変動など地球環境問題へのより積極的な取り組みを求められた.また,老朽・狭隘化の進んでいる中野キャンパスから柏キャンパスへの移転計画は意義深く,予算や教員数の減少が続く厳しい状況でも現在の活動を維持できる環境を整えるために努力するようにとの要望を受けた.本外部評価に先立ち,2004年10月,本所は本学生産技術研究所が制作した本学の標準実績データベースをカスタマイズして,各種評価に必要なデータベース(教員実績入出力システム)を構築した.このデータベースは本所の要覧・年報の作成などに利用されている.

2010年3月,先端海洋システム研究センターは時限によりその役目を終えた.

2010年3月,中野キャンパスから柏キャンパスへの移転を完了した.1980年代からすでに問題視されていた本所の狭隘化がほぼ解消された.新研究棟(大気海洋研究棟)は柏キャンパス最西端に位置するアイ・ストップとしてふさわしく,同時に海の研究所の表情が感じられる施設とすることを基本コンセプトに建設された.床面積は旧国立大学時代の基準面積の75%にあたる15,000m²となったが(中野キャンパスでは基準面積の約50%),機能性の優れた建物となった.大気海洋研究棟完成までの過程は第2章に詳述されているが,大気海洋研究所ニュースレター『Ocean Breeze』第1号(http://www.aori.u-tokyo.ac.jp/newsletter/index.html)にも記されている.